【2月19日 AFP】DNAに起きる特殊な変化を通じてがん性細胞を特定する手法を、米ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究チームが発見し、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次総会で18日、発表した。この手法では、極めて小さながん性細胞まで検知することが可能で、新たながん治療につながることが期待される。

 同大の研究チームによると、最新のDNA塩基配列決定法を用いることによって、健康な細胞ではなく、腫瘍だけに起きる急激なゲノム再構成を特定できたという。がん性細胞で起きるDNA再構成は腫瘍やがん患者特有のものだという。

 研究チームの一員で同大で腫瘍学を研究するVictor Velculescu准教授は、Personalized Analysis of Rearranged EndsPARE)と呼ばれるこの新手法は、がん細胞の特定を容易にする「劇的」な発見だと述べ、「ゲノムを複数の章で構成される本に例えると、再構成は2つの章を入れ替えるようなもので、順番はめちゃくちゃとなる」と説明した。対照的に、単一塩基の突然変異は、1章に含まれる1文字の誤植のようなものだという。
 
 これまでのところ、科学者たちは個々のゲノム配列において「誤植」を探すことに研究の重点を置いてきた。一方、PAREはゲノム全体を対象とする。本に例えれば、一冊まるごと調べるようなものだ。

 つまり、1章のなかから誤植を探し出すよりも、1冊の本から入れ替わった章を見つけ出すほうが簡単というわけだ。

 Velculescu准教授は、「DNA再構成を正確に認識することができれば、健常細胞とがん性細胞を見分ける最良の方法となるだろう」と、PAREの意義を説明した。

 この研究論文を共著した同大腫瘍学部のルイズ・ディアス(Luis Diaz)教授は、PAREは腫瘍に冒されたDNAに過敏なほど反応するため、CTスキャンでは検知できない隠れた腫瘍や臨床的に特定できないがん性細胞の発見に非常に有効となると強調した。

 また、がん性細胞を手術で完全に除去した患者についても、術後の不必要な化学療法や放射線治療を回避できる。

 研究チームは今後2年以内に、PAREを用いたがん検知手法を医療機関で実施できるよう目指したいと語っている。(c)AFP/Karin Zeitvogel