【1月14日 AFP】高血圧や心臓病の患者に広く使われている処方薬が、アルツハイマー病などの認知症のリスクを下げる可能性があるとの研究結果が、13日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)」(電子版)に発表された。

 ボストン大学医学部(Boston University School of Medicine)のBenjamin Wolozin氏が率いる医師のグループは、2002~2006年の4年間、65歳以上の81万9000人の心臓病患者について認知症の発症状況を調べた。調査対象は主に男性の退役軍人で、データは米国の退役軍人省が提供した。
 
 この結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)という薬を服用している患者はほかの薬を飲んでいる人に比べ、認知症になるリスクが19~24%低いことが分かった。

 また、調査開始時にアルツハイマー病と診断されていた患者でARBを服用したグループは、それ以外のグループと比べ、調査期間中に介護施設に入る割合がおよそ半分だったという。

 ARBは、血管の筋肉を収縮させるアンジオテンシンという物質を阻害する。このため血管が拡張して血圧が下がる。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)という薬と併用している人に特に高い認知症予防効果が見られた。

 過去の研究で、ARBはほかの薬よりも糖尿病や脳卒中を予防する効果が高いことが示唆されていたが、認知症予防にも効果があるとされたのは今回が初めて。

 同じ号に寄せられた解説記事で、カナダのカルガリー大学(University of Calgary)の研究者は、研究期間が比較的短いうえに認知症の家族歴を考慮しておらず、女性が少ないことから、さらなる研究が必要だと指摘している。

 アルツハイマー病などの認知症患者は世界で約3600万人いるとされ、今後20年で倍増するとの予測もあり、予防できればその恩恵は大きいと研究チームは主張している。年齢、遺伝、心臓病が認知症発症の要因として知られているが、最近では中年期における糖尿病と高血圧との関係も疑われている。(c)AFP