【12月22日 AFP】割礼(包皮切除)の際に誤って性器を切断されて万が一生き残ったとしても、その傷は少年の残りの人生に「恥」として刻印される。南アフリカの一部の地域の少年たちが「男」になるには、そうした危険な代償がつきまとう。

 東ケープ(Eastern Cape)州に住む、同国で2番目に人口が多い民族、コーサ(Xhosa)人の少年たちは割礼という神聖な儀式を経て「少年」を卒業し、「大人」になる。だが毎年、ろくに訓練を受けていない割礼師による下手な割礼術により、合併症で死ぬ若者たちが後を絶たない。

 少年たちは昔ながらに人目につかないやぶの中で割礼を受け、傷が癒えるまでの約4週間、社会の決まりごとや大人の責任などを学ぶ。治癒が早く、痛みも少ない病院での割礼を選ぶと、生涯にわたって後ろ指を差される原因になる。

 割礼を受けなくても問題だ。割礼をまもなく受けるという18歳の少年は「いい年をして割礼を受けていないと、社会からは決して『男』とはみなされない。いつまでも『少年』のままでいるやつと、一緒に過ごしたがる人間はいない」と語った。

 そして割礼が失敗した者や、入院するはめになった者もまた「男になりきれていない」という烙印を押されてしまうことになる。  同州の保健当局によると、この15年間で割礼の失敗により死亡した少年は200人以上、性器を失った少年は90人に上っている。一つの地域に200人という死者数が集中しているのだ。

■割礼の奨励も

 一方、HIV感染者数が世界最多の部類に入る南アフリカの政府は現在、男子の割礼の奨励に力を入れている。包皮切除を行った男性ではHIVへの感染確率が半減することが一連の調査結果で示されているためだ。

 同国最大の民族であるズールー(Zulu)人のグッドウィル・ズウェリティニ(Goodwill Zwelithini)王は今月、HIV対策として若い男性たちに対する割礼の儀式を復活させたいという意向を示した。

 課題は、伝統的なしきたりと現代医学、そして法律をいかに整合させるかという点にある。

■割礼の失敗で自殺するケースも

 東ケープ州保健当局は、割礼の儀式で毎年出る死亡者について、特に農村部における割礼師の医学知識の欠如と技能不足を最大の理由に挙げる。実際、割礼師は包皮切除の際に麻酔薬や殺菌消毒などは使用しない。割礼のための訓練を受けたこともなく、世襲制のため親から子へと技術が継承されるのみだ。

 今年6月には16歳の少年が、性器が壊死(えし)した状態で病院に搬送された。割礼後に適切な処置が行われなかったため、感染症が悪化したのだ。

 性器の切断を余儀なくされた少年たちの大半が、「恥」を背負った人生には耐え切れず、自殺を図るという。割礼後に食料や水が十分与えられず、脱水症に苦しんだり出血多量で死ぬケースもある。

 南アフリカ政府は8年前、割礼を受けることができる法定年齢を18歳とする法律を可決した。だが、早く大人になりたい15歳程度の少年が割礼師に割礼を頼む例は少なくない。

 東ケープ州保健当局は前月、農村部の長老たちを集めた会議を開き、消毒したナイフの使用を促すなど、割礼による死亡事故の防止への協力を呼び掛けた。(c)AFP/Sibongile Khumalo