【11月19日 AFP】心臓発作や脳卒中につながる動脈硬化は現代人に特有のものではなく、古代エジプトのファラオたちも心臓病に苦しんでいた――。米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)などが、18日の「米国医師会誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)」に研究結果を発表した。

 同大のグレゴリー・トーマス(Gregory Thomas)教授(心臓病学)によると、現代病とされるアテローム性動脈硬化症は、今昔の生活習慣の違いにもかかわらず、約3000年前の古代エジプトにおいても、社会経済的な地位が高い人々の間で一般的だったことが明らかになった。

 この発見から「アテローム性動脈硬化症を完全に理解するには、現在のリスク要因にとらわれずに考える必要があるかもしれない」と同教授は話している。今日、動脈硬化症の主なリスク要因として知られているのは高脂肪食品、運動不足、喫煙などだ。

■王たちのミイラ20体を調査

 研究は、古代エジプト王のメルエンプタハ(Merenptah、紀元前1213~1203年)のミイラの銘板に「60歳で死亡。関節炎、虫歯、動脈硬化に苦しんでいた」と書かれていたことがきっかけで始まった。

 米・エジプトの心臓医チームは、エジプト学者やミイラ研究の専門家らとともに、カイロ(Cairo)のエジプト考古学博物館(Museum of Egyptian Antiquities)から20体のミイラを選び、CTスキャンを行って心臓血管系を詳細に調査した。
 
 すると心臓と動脈が判別できたミイラ16体のうち9体で、動脈石灰化がみられた。動脈石灰化の痕跡は、動脈の内部および動脈があったはずの場所で確認された。なかには、最大6本の動脈が石灰化しているミイラもあった。

 骨格の分析から、ミイラの大半で死亡推定年齢を割り出すことができた。また大半のミイラについて名前や職業に関する記録を集めることができた。

 その結果、45歳以上で死亡したミイラは8体で、うち7体に動脈石灰化が見られ、アテローム性動脈硬化症を患っていたことがわかった。それよりも若い年齢で死亡したことがわかったミイラも8体だったが、うち同様の石灰化がみられたのは2体だった。また動脈硬化は男女双方にみられた。 

■動脈硬化症は当時も一般的

 身元が判明したミイラについては、いずれも社会経済的な地位が高く、多くは王の廷臣を務めていた。彼らが具体的に何を食べていたかは明らかになっていないが、研究チームによると、当時の食べ物としてはさまざまな種類の牛やアヒル、ガチョウなどが一般的だったという。

 トーマス教授は「これらのミイラの死因がアテローム性動脈硬化症だったのかどうかは不明だが、この病気に当時多くの人がかかっていたことは確かだ」と語っている。(c)AFP