【10月10日 AFP】美食の都で「赤ワインとフォワグラは御法度」?-清い生活を目指すフランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領のお気に召そうと、フランスの閣僚たちの半分が脂肪との戦いを繰り広げている。

 サルコジ大統領は就任以来の2年間で、7キロ減量したといわれている。7月、ジョギング中に倒れたのは、厳しく制限された食事メニューとハードなトレーニングに、仕事から来るストレスが相まった結果だとされた。

 元スーパーモデルで細身のカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)夫人の勧めもあり、スリムになった大統領は閣僚たちにも健康熱の伝道を試みたようだ。大臣たちの「使用前・使用後ショット」を比べると、確かに何人かは以前よりもやせている。

■政治家に人気はパリ郊外のレストランではなくクリニック

 最も顕著にやせたのが、サルコジ大統領の終生の盟友といわれるブリス・オルトフー(Brice Hortefeux)内相で、今週も、スープに低脂肪ヨーグルトとレッドベリーという抑えに抑えた「過酷ダイエット」メニューが報道されたばかりだ。

 しかし、ウエストラインを気にしているのはオルトフー氏だけではない。人気栄養士のジャン・ミシェル・コーエン(Jean-Michel Cohen)氏がパリ郊外で開くクリニックの VIPリストには、サルコジ政権内のほかの閣僚や他の政治家たちの名も並ぶ。

 コーエン氏はAFPの取材に対し「これはよくある症候群だ。人が上司をまねるということだが、この場合は上司が減量し、まわりに自分と同じイメージを期待する」といい、閣僚の半分が現在ダイエットしているが、非常に慎重に行っている」と述べた。

 同氏のクリニックの顧客層も変化してきた。「最初は25~50歳の女性だったが、その後アーティストやTVジャーナリストがどっと押し寄せ、今は政治家が多い。男女どちらもだ。自分の子どもをクリニックに通わせ始めた政治家もいる」という。

 コーエン氏によると、そのほかダイエット中の政治家は、エリック・ベッソン(Eric Besson)移民担当相、ラマ・ヤド(Rama Yade)スポーツ相、サルコジ大統領の与党・国民運動連合(UMP)のグザビエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)幹事長とロジェ・カルチ(Roger Karoutchi)上院議員らだ。

 閣僚で囲む夕食会のメニューもヘルス・コンシャス(健康志向)に変わった。

「昔はラム肉のローストに豆の付け合わせ、タルト・タタン(リンゴの焼き菓子)、ワインはボトル半分というのが定番だった。もうそんなメニューは出ない。今はロブスターのテリーヌに伊勢エビの付け合わせサラダ、あとはミネラルウォーターだ」

■離婚・結婚がサルコジ風ダイエットのきっかけ?

 サルコジ大統領は長年、ボクサーのように健康なイメージを保とうと努力してきた。就任後初日にはエリゼ宮(大統領府)の階段を軽く走り登ってみせた。

 しかし、過剰とも受け取れるほどの徹底的な健康志向は、前妻セシリアさんとの離婚からみられるようになった。「サルコジ氏も普通の男性。妻に去られて、もう一度、自分で自分を魅力的だと信じることが必要になった。しかし、彼のダイエットはそれこそ、栄養とダイエットに関しては本当のプロである美の女王(元モデルのカーラ夫人)と再婚して新しいレベルに達した」(コーエン氏)

 米国の政治家は、ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)からバラク・オバマ(Barack Obama)現大統領まで長らく、ウエストラインの維持に気をつかってきたが、少なくとも男性においては恰幅のよい体型は「安心感を与える」と受け取られる美食の国フランスにあって、現在の流れはちょっとした革命だ。

■太っているのは『負け組』?

 コーエン氏は指摘する。「もちろん、昼食でワインボトル半分をあおってしまったら、空きっ腹で仕事している人間に比べて生産的であるわけがない。しかし今は、わたしたち全員の道徳観が自分の体のコントロールとスリム体型の維持に向いてしまっている。脂肪は不道徳だとみなされている」

 6月の内閣改造前、サルコジ大統領は閣僚入りを望む人物に、髪型をさっぱり整え、体重を2、3キロ落としてからくるようにと告げたと報じられた。この時、まるまるとした体型だった最後の1人、アンドレ・サンティーニ(Andre Santini)氏は内閣から外された。

 今年末までにサルコジ政権は大規模な「反肥満キャンペーン」を立ち上げる予定だ。「まだ太っている人は誰でも、このキャンペーンが始まったら『負け組』だとみられるだろう」(c)AFP