【7月10日 AFP】早稲田大学(Waseda University)と防衛医科大学校(National Defense Medical College)の共同研究グループは8日、サランラップの1000分の一程度の薄さの高分子超薄膜(ナノシート)を応用した外科手術用の「ナノばんそうこう」を開発したと発表した。臓器の損傷などに貼付でき、体内で生分解できるという。

 透明で密着性の高いこのナノシートは、カニの甲羅から採取した物質と海草から採取した粘性物質を原料としており、厚さはわずか75ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)。

 研究に参加した早稲田大学理工学術院、先進理工学研究科研究助手の藤枝俊宣(Toshinori Fujie)博士は、「これは世界で一番薄いばんそうこう。ラップはいろいろなものの表面にくっつくが、(研究では)シートを果てしなく薄くしていった。そうすると、ものすごく薄いので、膜が非常に柔らかくて、のりがなくてもピタッとくっつく」と、AFPの取材で語った。

 外科手術では通常、傷口を縫合するか、たんぱく質の1種フィブリンを塗布した厚さ数ミリメートルの創傷被覆材を使用する。フィブリンは血液凝固を活性化し、のりのような効果を果たす一方で、周辺組織に癒着を引き起こす面もある。

 研究グループは、このナノシートの一片で、イヌの肺に空いた6ミリ大の穴をふさぐ実験を行った。シートは呼吸による負荷にも十分に耐えて回復を促進し、傷は1か月以内に痕を残さず、きれいに治った。研究者たちは、人間の治療でも3年以内に臨床研究を始めたいとしている。

 また、外傷への応用も期待できる。「これを使って治療した臓器は、縫合後のみみずばれができない。これは皮膚でもそうだろう。次のステップとしては、間違いなく皮膚への応用があると思う」(藤枝氏)。例えば、乳がん手術などへの応用も可能だろう。藤枝氏によると、床ずれに使いたいと言う人もいる。

 さらには医療用以外、例えばしわを伸ばしたり、肌用のコンディショナーをつけて保湿するなど美容分野への応用も考えられるという。「皮膚に張ってもまったく見えないので、日中オフィスでパックということも(技術的には)可能でしょう」(c)AFP