【6月16日 AFP】イスラム教が深く根付いているナイジェリア北部では、薬草の媚薬(びやく)が爆発的に売れている。夫たちは、イスラム教で許されている最大4人の妻全員をよろこばせようと努め、妻たちは、複数いるライバルの中から夫の注意をひこうと躍起になっているのだ。

 カノ(Kano)郊外に事務所を構えているスレ・アダム(Sule Adamu)さんは、薬草を40年間販売してきた。購入するのは主に男性だが、購入者はこの4年間で3倍以上に膨らんだと話す。

 カノのNGO「持続可能発展センター(Sustainable Development Centre)」によると、夫の気をひきたい女性が買い求めるケースも多い。また、結婚したばかりの花嫁の母親が、花婿の性的欲望を満足させるための性的興奮剤を持たせることもあるという。

 人口400万の大都市カノでは、媚薬は至る所で売られている。店はモスクの前にも出現する。行商人たちが車や手押し車で市内を回りながら、メガフォンやラウドスピーカーで商品を宣伝するという光景も、見慣れたものだ。

 媚薬の形態は、液体、ゼリー状、粉末とさまざま。飲むタイプと、ペニスに塗るタイプがある。

 ハルナ・ウスマン(Haruna Usman)さん(39)は、この5年間、媚薬を飲み続けている。おかげで夫婦の性生活は飛躍的に向上したという。「飲む前は、週に1度のセックスがやっとだったが、今では週に5回以上はしているよ。1晩に3、4回ってことだってあるんだ」

■夫は「男らしさ」を証明しなければならない

 カノのNGO「青少年健康情報プロジェクト(Adolescent Health and Information Project)」のマイロ・ベロ(Mairo Bello)氏は、媚薬の需要が高まっている背景には、「男らしさとは性的能力が高いこと」という概念があると説明する。

 4人までの妻帯が許されるイスラム教社会のカノでは、妻たちは夫の愛情を勝ち取ろうと躍起になり、夫の方は家庭の平和を保つために1人1人の妻に対して「男らしさ」を証明する必要があるというのだ。

 市内の大きなドラッグストアではバイアグラ(Viagra)やシアリス(Cialis)といった性的不能治療薬が売られているが、多くの人が、安価な媚薬の方を好む。4錠入りのバイアグラは27ドル(約2700円)もするが、薬草の方は効果が数日間持続する上に値段は2ドル(約200円)もしない。

■深刻な副作用も

 媚薬は、成分が薬草であるため、安全であると考えられているが、勃起(ぼっき)した状態から元に戻らないという副作用も多数報告されている。ある泌尿器科医によると、こうした経験をした男性の半数は、性的不能に陥ってしまうという。

 ナイジェリア国内では、媚薬などの伝統薬の販売規制は、検討されているものの、現在は一切ない。(c)AFP/Aminu Abubakar