【5月4日 AFP】新型インフルエンザ感染が確認されたメキシコ人男性が7時間ほど滞在していた香港(Hong Kong)のメトロパーク(Metropark)ホテルで、宿泊客および従業員300人あまりが、7日間にわたる缶詰状態を強いられている。

 メトロパークは香港の繁華街、湾仔(ワンチャイ、Wanchai)に立つ四つ星ホテルで、感染男性が7時間ほど滞在していた。この男性の容体は落ち着いているという。

 新型の「インフルエンザA型(H1N1)」感染の拡大で、世界各国で緊急対策がとられているのは事実だが、ホテルを封鎖したのは香港だけだ。今回の措置については、政府担当者のなかからも「極めて厳しい」との声もあり、感染防止対策としても無意味だとする専門家の意見もある。

■ホテルから一歩も出られず…積もるストレス

 ホテル内に留め置かれたままの宿泊客や従業員も、いら立ちを募らせる。

 AFPの電話取材に応じたケビン・アイルランド(Kevin Ireland)氏は、「韓国人が大声でわめいていたし、かなり動揺した様子の英国人の夫婦も見かけた」と証言した。またAFP特派員によると、2日には、マスクを着用した女性客が泣き崩れ、保健担当者がなだめていたという。

 アイルランド氏は、米飯の食事が続くことや、テレビのチャンネル数が限られていることなどが、宿泊客らのいら立ちの原因と指摘したものの、ホテルの封鎖措置には理解を示した。

■封鎖措置の効果は?

 感染症専門医の労永楽(Lo Wing-lok)氏は、香港政府の対応は行きすぎとみる。「インフルエンザは飛沫感染による病気で、感染者から2メートル以内の範囲にいない限り、感染リスクは低い」

 また、同ホテルが、空港から病院に搬送されるまでの間に、感染男性が立ち寄った数多くの場所の1つにすぎない点を指摘。ホテル封鎖は、「インフルエンザ封じ込め対策よりも政治的パフォーマンスの意味合いが濃い」とみている。

 労氏は、7日間にもおよぶ封鎖措置は、今後体調不良を感じた人が申告するのをためらわせると警告する。
 
■ホテルを先に出た50人、足取りつかめず

 一方、香港当局は3日も、缶詰措置が導入された1日夜よりも前に同ホテルを離れた約50人の行方を追っている。
 
 フランスのビジネスマン、オリビエ・ドリージュ(Olivier Dolige)氏(43)は、メトロパークホテルに商談に訪れていて、ホテルに缶詰となった。しかし同氏は、洗濯設備や食べ物の不足などへの不満はあるものの、悪いことばかりでもないと話す。仲間と協力し、外部からオーストラリアワインやお菓子を「密輸」したそうだ。(c)AFP/Guy Newey