【4月19日 AFP】世界的に自殺が増加する危険な時期は春と景気後退期――。英オックスフォード大学(Oxford University)のキース・ホートン(Keith Hawton)氏とベルギー・ヘント(Gent)大学病院のKees van Heeringen氏が17日英医学専門誌ランセット(Lancet)に発表した論文で、こうした傾向が明らかになった。

 これによると、毎年の推定自殺者数は全世界の死者数の1.5%にあたる約100万人。自殺者数は国ごとに、さらには緯度ごとに大きく異なるという。

 一般的に自殺は旧ソ連諸国で大きな問題となっていると、この論文は指摘する。フィンランドやラトビア、ハンガリー、中国、日本、カザフスタンの自殺率は10万人中20人以上と他の国に比べ特に高い。さらに、リトアニアでは10万人中約40人となっている。

 中国では全死亡者数の3.6%を自殺者が占めている。これは全世界の自殺者数の30%にあたり、世界の全人口における中国の人口比率を大幅に上回るものだ。

 欧州では、日照時間の少ない北部諸国の自殺率が高く、特に春に自殺を図る割合が突出している。

 春に自殺が増える原因は解明されていないが、日照時間の少ない時期が続いた後に季節が変わることで、なんらかの形で神経のバランスが崩れるのではないかという生物学的な要因が指摘されている。また、幸福そうな人を目にすることが特に春にはつらくなるという社会的な要因を指摘する研究もある。

 失業者の自殺も非常に多い。ただし、就職や就業を難しくすることも多い精神疾患の二次的な影響も考えられている。ホートン氏は、「過去の不況では、特に若年層の自殺の増加が確認されている」と語った。

 自殺を増加させる原因は、さまざまものがある。例えば1997年に英国のダイアナ元妃(Princess Diana)がパリ(Paris)で交通事故死した際には、自殺率は17%増加したという。一方、戦争や大規模なテロ攻撃などは自殺率を低下させるという。これは社会の結束を強めるからだと考えられている。(c)AFP