【2月23日 AFP】強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1型)や1918年に世界的に大流行し数千万人が死亡した「スペイン風邪」など、複数のタイプのインフルエンザ・ウイルスに有効な抗体を人工的に作成することに、米国の科学者らが成功した。科学誌『Nature Structural and Molecular Biology』上で22日、発表された。

 研究に取り組んだのは、米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)のウェイン・マラスコ(Wayne Marasco)博士らの研究グループ。

 研究者らは、免疫系の白血球から作り出した単クローン抗体をスキャンし、うち10個の抗体がH5N1型ウイルスに効くことを確認。さらに、マウスを使った実験で、この中の3個の抗体が、H5N1型を含むインフルエンザA型ウイルス16種類のうち、10種類のウイルスに効き目があることがわかったという。

 この抗体は、ウイルス感染細胞上の抗原を探し出して結合し、免疫細胞がウイルスを攻撃する際にビーコンの役割を果たす。この構造について研究者らは、「ウイルスのアキレス腱」と表現。遺伝子的に安定しており時を経ても変異しないため、複数のインフルエンザウイルスに有効だとしている。

 研究を支援する米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious DiseasesNIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長は、「インフルエンザの大流行に備えた予防医療の飛躍的な進歩を約束する」画期的な研究だと称賛する。

 研究者らは、人体での臨床実験を2年以内にも始めたい考えだ。

 インフルエンザでは毎年、免疫力が低下した人びとを中心に全世界で25万人あまりが死亡している。(c)AFP