【2月18日 AFP】パリ(Paris)のキュリー研究所(Curie Institute)による、DNAが破壊されたように見せかけてがん細胞を自然死させる「おとり」分子に関する研究の結果が、15日の米医学誌「Clinical Cancer Research」で発表された。がん、特に腫瘍(しゅよう)退治の新兵器として、期待される。

 現在一般的ながん治療法である化学療法や放射線治療は、がん細胞に十分な損傷を与えて「アポトーシス(細胞自然死)」を誘導することを狙いとしている。だが、アポトーシスを活発化させるのに十分な損傷を与えられないこともあり、その場合、生き残ったがん細胞は自己を修復できることになる。

 研究チームは、DNAの二重らせん構造の遺伝子情報の両端が破壊されたように見せかける、DNAの断片「Dbaits」を開発。化学療法や放射線治療でも死なないがん細胞に対し、実際よりもはるかに破壊されているように信じ込ませ、自然死させるというからくりだ。

 この「Dbaits」は、マウス実験では有効性が確認されている。がん細胞を持つ複数のマウスにこれを注入し、その数時間後に放射線治療を受けさせたところ、がん細胞の75-100%を除去できたという。ちなみに、放射線治療だけのマウスでは30-50%しか除去することができなかった。また、健康な細胞組織への影響はなかったという。

 研究チームの責任者であるMarie Dutreix氏によれば、順調に行けば、2010年末までには臨床試験を始められそうだという。

 こうした技術は、特に、放射線治療があまり利かない脳腫瘍や皮膚がんの治療において有望視されている。人体への有効性が確認できれば、腫瘍の周りの健康な細胞に害を及ぼすことが多い放射線治療において、照射量を大幅に減らすことも可能だという。(c)AFP