【11月10日 AFP】四半世紀にわたるエイズ(HIV/AIDS)ワクチン開発への取り組みは、前年に大手医薬品メーカーが臨床試験を停止するなどさまざまな問題が生じたことで暗雲がたちこめているかにみえるが、一般に考えられている以上に期待が持てるようだ。

 9日発表された論文によると、免疫細胞であるキラーT細胞を投与するワクチンは効果があることが、動物実験で明らかになったという。

 米医療用医薬品大手メルク(Merck)は前年、有効なワクチンとして期待されていたT細胞ワクチンの試薬「V520」の臨床試験を打ち切った。V520は、抗体を作るためのHIVウイルスを体内に注入する際に、ベクター(媒介)として通常の風邪のウイルスであるアデノウイルス5型(Ad5)の改変型を利用したものだった。

 今回の研究は、アカゲザルで同様の風邪ウイルスをベクターとして使用した。すると、メルクのワクチンとは異なり、T細胞がHIVの近縁に当たるサル免疫不全ウイルス(SIV)の撃退に役立つことがわかった。そこで致死量にあたるSIVをサルに注入すると、ウイルスの複製が抑制され、サルは感染後500日以上、健康状態を保った。

 T細胞ワクチンには、ポリオワクチンや天然痘ワクチンのような予防効果はないが、ウイルスの感染抑制・感染細胞の退治をキラーT細胞に担当させることで、「治療効果のある」ワクチンとして期待されている。

■「免疫細胞」に期待

 エイズの症例は1981年に初めて報告された。原因ウイルスであるHIVウイルスが早くから同定されたため、ワクチンも早期に開発されるとの期待が高まったが、これまでのところワクチンの臨床試験が行われたのは50人に過ぎず、うち最終段階の第III相まで遂行されたのはわずか2人で、いずれも失敗に終わっている。

 現在、世界では約30のエイズワクチンの臨床試験が行われている。ワクチンは当初、抗体を投与する方法がとられていたが、至る所で突然変異を引き起こすHIVウイルスではほとんど有効ではないことが明らかになっている。そこで現在は、免疫細胞を導入する方法に主眼が置かれている。(c)AFP