【9月22日 AFP】中国で粉ミルクや乳製品から化学物質メラミンが相次いで検出されている問題は、中国の一般市民にとって、今までにも数多くあった食品汚染問題のひとつに過ぎない。中流階級の中国人は粉ミルク問題が話題に上れば、まだ暴かれていない食品スキャンダルがあるのではないかという怒りや恐れの感情を示し、同時に、現代の中国ではそういった危険が避けがたい日常の一部になっているのだという、あきらめの感情をもつ。

 宝石商を営むCathy Wangさん(38)さんは、北京(Beijing)市内の米コーヒーチェーン大手スターバックス(Starbucks)の店内で、紅茶をすすりながら「食品が汚染されているから多くの人ががんになるのだと思う」と語る。主要取引先の牛乳から化学物質のメラミンが検出されたのを受けて、スターバックスでは、暖かい飲み物がブラックコーヒーと紅茶のみになっている。

 上海(Shanghai)のスターバックスで話を聞いたHuang Yan(30)さんは、「汚染米もあったし、豚肉に水が注入されていることもあった。鳥インフルエンザに感染した鶏肉も出た。そして今回は牛乳だ。安全を意識しすぎると、食べられるものがなくなる」と語った。

「どれほどの化学物質が食品に含まれているか、誰にもわからない。この国で、この街で暮らしている限り、こういった現実を受け入れなければならない」(Yanさん)

 牛乳は、中国の伝統食品ではない。しかし、近年になって、中流階級を中心に人気を拡大していた。30年前には、ほとんど飲まれていなかった牛乳だが、所得の増加と健康志向、そして欧米スタイルのスーパーマーケットの登場で、牛乳は主要な食料品となった。

 北京市内のスーパーマーケットの陳列棚の前で、引退生活を送るXu Yueqin(62)さんは、「牛乳は、習慣になっていて必要不可欠。毎朝、シリアルと一緒に口にしている。けれど将来は、間違いなく飲む量を減らすだろう」と話した。

 スーパーマーケットの売り場で22か月の息子を抱えた主婦のMary Li(38)さんは、不信感があったので、いつも外国製の粉ミルクを買っていたと語るとともに、「粉ミルクはほんの一例。この国には、明らかになっていない問題がたくさんある」と強調した。(c)AFP