【8月25日 AFP】(写真追加)中国とフランスで行われた2例の顔面移植は、2年が経過した現在、経過が極めて良好で、顔面移植の有効性が確認されつつある。22日の英医学誌「ランセット(The Lancet)」に、このような論文が掲載された。

 やけど、腫瘍、先天性異常、交通事故で受けた外傷などによる顔面の極端な変形に対しては、顔面移植がこれまでに世界で数例行われている。中国とフランスで行われた2例については、いくつかの合併症は見られたものの通常の身体機能をほぼ回復し、生活にも支障をきたしていないという。

 1例目は、2004年にヒグマに襲われ顔面を損傷した中国の李国興(Li Guoxing)さん(30)で、西安(Xian)の病院は2006年4月に顔面移植を行った。激しい拒絶反応が3回発生したが、医師団はステロイドや薬剤でこれを抑えることができた。

 論文は本例に関し、「顔面移植は顔面変形の治療法になりうる。患者の社会復帰にも貢献する」と結論付けている。

 2例目は、神経繊維腫と呼ばれる顔面腫瘍を患うフランスの29歳の男性で、2007年1月にクレテイユ(Creteil)の病院で顔面移植が行われた。腫瘍は非常に大きく外見的にも醜かったため、男性はきちんと食べることもしゃべることもできず、社会的にも孤立していた。

 李さん同様に激しい拒絶反応が起きたが、治療で抑えた。手術から1年後には移植した組織に感覚と運動機能がよみがえり、手術から13か月以内にはフルタイムで働けるまでに回復し、社会の一員であることを実感できるまでになった。

 同病院のロラン・ランチエリ(Laurent Lantieri)教授らは、「本例は、顔面移植が外科的に可能であり、特定の顔面変形の矯正に有効な手段であることを示している」と論文に記している。その一方で、いわゆる同種移植片による免疫拒絶に関連したリスクについては長期にわたりフォローアップする必要があるとしている。

 同紙には、「顔面移植の先駆的なチーム間で大々的な協力関係を築き、データを互いに交換すること」を求めるフランス人外科医のコメントも載せられている。 

 世界初の顔面移植は、2005年にフランス人女性イザベル・ディノワール(Isabelle Dinoire)さんが受けている。(c)AFP