【4月24日 AFP】米国とドイツで死者数十人を出した血液凝固阻止剤ヘパリン(heparin)について、国際研究チームは、汚染されたヘパリンがどのように安全検査を通過したのかを示す2つの研究結果を発表した。

 両研究を率いたのは、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のRam Sasisekharan教授。研究は汚染物質を特定するとともに、米国だけで少なくとも死者81人を出したアレルギー反応がヘパリンによってどのように引き起こされたかを示している。

 米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)は今週、これらの研究に基づき、汚染物質を「過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)」と特定した。Sasisekharan教授によると、FDAは汚染されたヘパリンの検出に向けた動きをすでに開始しているという。

 ヘパリンは腎臓透析や心臓手術などの際に血液の凝固を防ぐために数百万人の患者に対して使われており、通常はブタの腸から作られる。

 FDAによると、問題の製薬は中国の複数の工場で作られ、販売元の米製薬会社バクスターインターナショナル(Baxter International)に供給されていた。同社は2月にヘパリンを回収している。このほか、汚染されたヘパリンはオーストラリア、カナダ、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランドに供給されているという。

 22日の米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は、中国当局者がヘパリンが死を引き起こしたとの主張には反論したものの、中国で生産されたヘパリンが汚染物質を含んでいたことは認めたと伝えている。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究は、なぜ人を死に至らしめる化学物質OSCSの検出が困難かを説明している。以前から行われているヘパリンの安全検査は、タンパク質、脂質、DNAなどの汚染物質には有効だが、OSCSのようにそれ自体が長く複雑な構造を持つ糖分子の検出は事実上不可能だという。研究チームは複雑な糖分子を解析するために開発された新技術を使って、OSCSを検出する方法を開発したという。

 一方、医学雑誌ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)に掲載された研究は、OSCSがどのように2つの炎症を伴う反応を誘発するかを説明している。1つ目の反応は血液の凝固と血管の膨張を引き起こし、血圧の危険な低下をもたらす恐れがある。2つ目の反応は深刻で死に至ることもあるアレルギー反応を引き起こす毒物を作り出す。

 Sasisekharan教授は「われわれの研究は、簡単な生物検定によってヘパリンが世界中に供給されるのを防ぐことができることを示している」としながらも、どちらの研究も、どこで、どのような生産段階で汚染物質が混入したかという疑問については明確な答えを出していないと付け加えた。(c)AFP