【4月10日 AFP】新型の万能細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた治療により、パーキンソン病のラットの症状が大幅に改善したとする研究結果が、7日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 研究を発表したのは、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute)の研究チーム。
 
 研究チームはラットの皮膚細胞から作ったiPS細胞を神経細胞に分化させ、パーキンソン病のラットに移植した。数週間後、ラットのパーキンソン病の症状は明らかに改善していた。これは、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の代替物、いわゆる「再プログラムされた幹細胞」が、欠損したり異常のある神経細胞の代わりとなることを実証している。

 研究を主導したMarius Wernig氏は「再プログラムされた細胞が神経系に統合され、神経変性疾患に積極的に働きかけることが実証されたのは初めてだ」と指摘する。

 幹細胞治療はパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患に有効な治療法だとされてきた。いわゆる「万能細胞」は体のあらゆる細胞になることができ、欠損したり異常のある細胞の代わりになることができるからだ。

 ES細胞の利用をめぐっては、細胞が中絶胎児から採取されることから、倫理的問題がついて回っていた。しかし2007年末、日米それぞれの研究チームがヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことに成功したと発表、これにより倫理的問題が回避できる可能性が出てきた。

 今回の研究は、再プログラムされた細胞が動物で期待通りに作用したことを示す、最初の証拠となった。

 パーキンソン病は、ドーパミンを分泌する細胞の異常または欠損によって発症する運動器系の疾患。主な症状に体の震え、バランスの衰え、手足や胴体のこわばりなどがある。(c)AFP