【3月17日 AFP】 乳がんの転移を誘発する超遺伝子を特定したとする研究結果が、13日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 米カリフォルニア大ローレンス・バークリー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory in Berkeley, California)の厚井重松輝美(Termumi Kohwi-Shigematsu)氏率いる研究チームによると、親玉的な役割をするたんぱく質「SATB1」が、腫瘍細胞内で少なくとも1000以上の遺伝子の働きを変えることが分かったという。

 同氏によると、研究結果は乳がんの診断手段だけでなく、転移防止薬や治療薬の開発にも道を開く可能性がある。

 これまで、腫瘍内のがん細胞の転移の可能性を予測するのは不可能だった。ところが、SATB1が活発に働いている腫瘍は転移が決定付けられている。「SATB1は乳がんが転移性であると診断するための必要十分条件」だと厚井重松氏は指摘する。

 研究チームはマウスを使った実験で、腫瘍細胞内の特定のリボ核酸(RNA)を取り除くことにより、SATB1が働かないようにした。

 その結果は劇的なものだった。転移性乳がんに感染させられたすべてのマウスでは肺に125-160の転移性の小塊が形成されたのに対し、SATB1の働きが抑制されたマウスでは小塊形成はわずか0-5だった。一方、SATB1の量を増やすと逆の効果が現れ、がん細胞は急速に増殖し、猛威を振るったという。(c)AFP