【11月23日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の尾身茂(Shigeru Omi)西太平洋地域事務局長は22日、韓国の首都ソウル(Seoul)で開かれた世界トイレ協会(World Toilet AssociationWTA)の創立総会で講演し、下水道設備や公衆衛生の改善により、年間数十万人もの子どもの命を救うことができると訴えた。

 尾身事務局長は、世界では毎年180万人が下痢症で死亡していると指摘。その主な原因は、飲料水の汚染や、不十分な公衆衛生、衛生状態の悪さにあると説明した。死亡例の大半がアジア諸国においてであり、5歳未満の児童がその9割を占めるという。途上国では、児童の死因の2番目に位置するのが下痢だ。
 
 尾身氏の発表した研究結果によれば、下痢による死者は下水道設備の改善によって32%、手洗い励行などの衛生キャンペーンによって45%減らすことができる。
 
 世界トイレ協会は韓国を拠点とするNGOで、世界各地で清潔なトイレのない生活を余儀なくされている26億人を救おうと創立された。尾身氏によれば、26億人の3分の2がアジア人で、中国人とインド人が半数を占めるという。

 国連(UN)は、2015年までにこの数値を少なくとも半減させることを目標に掲げ、年間約100億ドル(約1兆800億円)の予算を割り当て、清潔なトイレの普及活動にあたっている。尾身氏によるとこの金額は、2005年の世界軍事支出の1%足らず、全世界におけるペットボトル入りミネラルウオーターの年間消費額の3分の1、欧州におけるアイスクリームの年間消費額とほぼ同額に当たるという。

 世界トイレ協会の発足提唱者である韓国の沈載徳(シム・ジェドク、Sim Jae-Duck)氏は、協会のキャンペーンを宣伝するため、160万ドル(約1億7000万円)を投じてトイレの形をした自宅まで建てた。22日の創立総会には、60を超える国から衛生当局の職員や衛生関連企業関係者ら約1300人が出席した。(c)AFP/Park Chan-Kyong