【9月19日 AFP】アフリカのサハラ砂漠以南のエイズ(AIDS)ウイルス(HIV)感染拡大は、抗レトロウイルス薬「テノホビル(tenofovir)」を予防薬として日常的に服用することで大幅に遅らせることができるとの研究結果を米国の研究チームが18日、発表した。

 研究チームによると、性的活動が最も盛んな層だけが服用する場合でも、HIV感染者を今後10年間で300万人減らせるかもしれないという。

「この治療法はHIV感染と闘いにおける強力な武器になる可能性がある」と研究責任者、ピッツバーグ大学医学部(University of Pittsburgh School of Medicine)のUme Abbas準教授は語る。

 研究結果は、米研究者グループ「Public Library of SciencePLoS」が運営する電子ジャーナル「PLoS One」に発表される。

 今回有効性が確認された抗HIV薬は、これまでHIV感染者の治療に使われてきた抗レトロウイルス薬の複合薬、「テノホビル」。

 サルを使った実験では高い成功率を示し、現在は臨床試験の段階に移っている。

 米公衆衛生当局が費用を負担し、同性愛者、バイセクシャル、性産業従事者、静脈麻薬常用者など患者を5つのグループに分類した臨床試験が、4大陸で実施されている。

 最初の結果が明らかになるのは2008年。しかし、米国、英国の研究者はこれまで得られたデータをコンピュータモデルにかけ、この薬がサハラ砂漠以南で提供された場合、HIV感染をどの程度予防できるか試算した。

 現在のところ有効性と服用率の度合いにより3つのシナリオが考えられるが、有効性を90%とし、性活動人口(15歳~49歳)の75%が毎日服用するという条件では、10年間で新たなHIV感染を74%削減することができるとの結果が出た。また有効性を60%で服用率を50%とした場合では25%の感染削減、有効性が30%で服用率が25%ではわずか3.3%となる。

 Abbas準教授は、サルの実験と同じ成功率が望める場合でも、全人口をHIV感染から予防するのは不可能としながらも、仮に政府や援助団体が、人口の18%にあたる性的活動の最も盛んな層を対象にこの薬を提供するだけで、10年間で感染率を30%削減することができると予想する。これは320万人が感染を免れることを意味する。(c)AFP