【9月3日 AFP】英米合同研究チームは3日、人間の身長差を決める遺伝子を初めて発見したと、米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に発表した。

 研究チームによると、遺伝子のDNA塩基配列のわずか1つの塩基の違いが、平均で約1センチ身長差をもたらす。ほかにも身長に関係する遺伝子が数百あるという。

 身長は遺伝要因で決まるとされており、両親ともに長身だと子どもも長身となる可能性が高いことは周知の事実だ。遺伝要因および、食事や運動といった環境的要素が複合的に決定要因となる肥満とは異なり、身長は90%前後が両親からの遺伝要因で決定される。

 身長と遺伝の関連は明らかだが、一般的な人間の身長を決める遺伝子の特定は、意外にも困難だった。これまで特定されたのは、身長に影響を与えるまれな病気をもつ少人数のみにおいてだった。

 研究チームは、主に英国、スウェーデン、フィンランド在住の欧州系白人5000人近くのDNAを分析調査した結果、HMGA2と呼ばれる遺伝子を発見。父と母の両方から受け継いだHMGA2の塩基配列の特定部分の塩基が、「チミン」ではなく「シトシン」の場合、平均で身長が約1センチ高いという。また、シトシンの遺伝子を父か母のどちらかから受け継いだ場合は、父母の両方からチミンの遺伝子を受け継いだ場合に比べて約0.5センチ高い。

 3万人近くを被験対象に追加調査した結果、欧州系白人の4分の1前後が父母の両方からシトシンの遺伝子を受け継いでいるとされる。また、4分の1が父母の両方からチミンの遺伝子を受け継いでいるとみられている。

 だが、身長に決定要因となるその他の遺伝子の大半は、まだ特定されていない。HMGA2は、身長の決定要因のわずか0.3%に過ぎない。

 研究チームは、HMGA2が細胞の成長を調節する役割もあるとみている。

 身長を決定する遺伝子は、他の病気に原因解明に、思いがけない収穫をもたらす可能性もある。統計的に身長の高い人は、特定の種類のガン(例えば前立腺、膀胱、肺など)を発症する確率が高い。このことは、細胞分裂を調整する遺伝子が、ガン細胞の増殖にも関与している可能性を示唆している。また、身長の低い人は心臓病のリスクが高いという統計もある。(c)AFP/Richard Ingham