シンガポールの研究所の実験用マウス(2002年8月16日撮影)。(c)AFP/Roslan RAHMAN
【7月31日 AFP】若年発症型の糖尿病(1型糖尿病)を発症させたマウスに、「インシュリン抵抗性」を改善するための治療を組み合わせる治療実験を行ったところ良好な効果が得られたという研究結果を、米ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)などの研究チームが発表した。
血糖値を正常に維持するためには、筋肉、脂肪、肝臓などの組織が血液中の糖分を吸収してエネルギーに変換する必要があるが、その際、インシュリンというホルモンが必要になる。筋肉、脂肪、肝臓などの組織を「インシュリン感受性組織」という。
インシュリンは膵臓で分泌されるが、1型糖尿病は免疫システムが自分の膵臓細胞を攻撃してインシュリンが不足することで発症することが知られていた。十分なインシュリンを自分で作ることができなくなった患者はインシュリン注射に頼らざるを得なくなる。また糖尿病は心臓病、失明、神経障害などのさまざまな合併症を引き起こす。
一方、筋肉などの組織のインシュリンに対する感受性が低下する「インシュリン抵抗性」は、従来から成人発症型の糖尿病(2型糖尿病)との関連が認められていたが、若年発症型の1型糖尿病にも大きな影響を与えていることが最近になって分かってきた。
今回の研究で、糖尿病を早期発見し免疫システムの治療と並行して、インシュリン抵抗性の原因となっている組織の炎症を治療すれば、糖尿病の進行を遅らせ、回復に向かわせることができることが初めて明らかになった。
研究に参加したハーバード大学医学大学院のTerry Strom教授は「インスリン感受性組織の炎症が1型糖尿病の大きな要因であることを示す最初の研究だ」と語る。
実験では、糖尿病を発症させたマウスに免疫システムの異常で膵臓細胞を攻撃するT細胞の働きを阻止する3種類の薬品を投与するととともに、炎症によりインシュリン感受性が低下した筋肉、脂肪、肝臓内部の組織の治療を行った。
この方法で14日ないし28日間治療を続けたところ、95%のマウスの血糖値は5週間から7週間で正常になり、その後300日間にわたって正常な血糖値を維持することができた。一方、治療をしなかったマウスは低血糖症にかかり、インシュリンを投与しても7週間以内にほとんどが死んでしまった。
この研究から、人間の場合でも糖尿病の進行を抑えるには、T細胞の異常を抑制するとともに、炎症を起こした組織を治療してインシュリン抵抗性を改善させることが必要だという示唆が得られた。
今後1年以内に、この原理に基づいた治療実験も開始されるという。研究結果は米国科学アカデミー紀要( Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載される。(c)AFP









