【7月14日 AFP】米科学誌「サイエンス(Science)」は12日、脳内で不快な記憶を抑制する部分が明らかになったと発表した。この調査結果により、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療における前進が期待される。

 1世紀にわたって心理学者らの間で論議されてきた「記憶を抑制」について調べるため、今回の調査では実際に被験者に脳スキャンを行い、不快な記憶について考えないようにした際の脳活動を記録した。この調査によると、健康な被験者16人の調査結果では、前頭前野部により記憶が抑制されることが確認されたという。

 実験では、無関係の写真2枚を組み合わせたものが被験者に40セット渡された。1枚は自然な表情の顔写真で、もう1枚は事故現場や悲惨なけが、電気イスや犯罪現場などの不安をあおる写真。

 各被験者はすべての組み合わせを記憶した後、顔写真のみを1枚ずつ見せられ、それぞれとペアになった写真を意識して思い出すか、意識して考えないように指示されたという。

 研究を指揮したUniversity of Colorado at Boulder博士課程のBrendan Depueさんは、脳スキャンの結果、被験者らは感情に強く訴える記憶をある程度コントロール(抑制)できることがわかったとの実験結果を発表した。

 研究チームは、この研究がPTSD、恐怖症や強迫性障害のセラピーや薬物療法に役立てられることに期待を寄せる。

 Depueさんは、「まずは健康な被験者の脳内で『記憶の抑制』がどのように起こり、どの神経機構が働いているかの研究が必要です。その後、臨床患者の神経機構を調べ、なぜ機能していないのかを探れば、症状の改善に貢献できるはずです」と語る。(c)AFP