【6月8日 AFP】瞑想に起源を持ち、5000年の伝統を持つヨガが、近年香港で爆発的に流行している。精力的にヨガに取り組み大金を費やす香港の人々にとって、ヨガは単なる「余暇活動」とは言いきれないようだ。

■ヨガの大衆化が加速

 香港の「ピュア・ヨガ(Pure Yoga)」は2006年、世界最大のヨガ・スタジオをオープンした。また香港市ではアジア最大規模の「ヨガ国際会議」が4日間にわたって開催されたばかり。同イベントには多くのヨガ用品の販売店が多く出店し、タイ・マッサージからサンスクリット語まで様々なレッスンが行われた。数年前までは商売気のないヨガ・インストラクターが運営する個人スタジオが少数しか存在しなかったが、最近では「ピュア・ヨガ」や「ヨガ・プラネット(Yoga Planet)」といった大手チェーンがスタジオの主流を占める。派手な外見で多くのメディア出演をこなす「ヨガ・プラネット」のインド人経営者カマル(Kamal)さんは、地元のセレブ的な存在となっている。

■ストレス社会、香港

 前週のヨガ会議にゲスト講師として参加した米国人ヨガ・インストラクターDesiree Rumbaugh氏は、ヨガブームの理由は香港の慌ただしい生活ペースにあると考えている。「驚くことに、香港はニューヨークの10倍程のストレスが存在する。だからこそ皆がヨガに打ち込み、週3、4日レッスンに通っているのだ」とRumbaugh氏。「ピュア・ヨガ」の創業者、コリン・グラント(Colin Grant)さんと「ヨガ国際会議」主催者によれば、香港総人口の約2パーセントが、定期的にレッスンに通っているとのこと。

■ヨガ産業の爆発的成長

 外見を重視する香港の人々の間でヨガブームが起きた理由のひとつには、ファッショナブルなヨガ用品の存在がある。ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)といった高級ブランドまでもがヨガ用品を展開している現在、マットやウエアなどの関連商品は大手スポーツメーカーのアディダス(Adidas)やナイキ(Nike)にとって大きなビジネスのひとつである。現在ヨガ産業は、全世界で年間180億ドル(約2兆1800億円)近くを売り上げていると予測される。

 バンクーバー(Vancouver)を拠点とするスポーツメーカー、ルルレモン(Lululemon)のような専門ブランドですら、数百万ドルの投資意欲を見せている。同社は2006年、1億5000万ドル(約182億円)近くを売り上げ、この5月には新たな増資計画を発表した。
 
 ヨガ愛好者として有名なマドンナ(Madonna)、グウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)、スティング(Sting)といった有名人の存在も、ヨガブームに拍車をかけた。

■商業化が変える、ヨガのあり方

 ヨガが健康法のひとつとして認められるにつれ、商業化を促す主流メーカーの参入が増えた。この流れが、古来の規律に支えられたヨガ本来のあり方に悪影響を及ぼすのではとの疑念の声も挙がっている。

 グラントさんは、ヨガと関係のないキック・ボクシングなどを売り物にするレッスンなどに疑念を抱きつつも、「必ずしも商業化がヨガに悪影響を与えるものではない」と語る。「わたしは、格闘技を取り入れたヨガを教えたりはしません。ただ、その類のものを好む人がいることが問題だとは思いません」「したいことをすればいいのです。ただパワーヨガのクラスに参加したいと思うならば、十分にトレーニングをして、しっかりめい想をしなければなりません。深くヨガに関わるか、そうでないかというだけの問題です」

■狙いは「中国の中流層」?

 アジア・ヨガ・カンファレンス(Asia Yoga Conference)のPaveena Atipathaディレクターは、米国でのヨガ人気が既にピークを迎えたのに対し、アジアには成長の大きな可能性が残っていると考える。「米国のヨガ産業は35億ドル(約4200億円)。アジアは、5年から10年前の米国と同じ状態にある」

 日本では既にヨガブームが定着。シンガポール、台湾、タイ、フィリピン、韓国でも急速に人気が出てきている。ヨガ・スタジオの運営者は、次の主要ターゲットとして成長する中国の中流層に着目している。(c)AFP/Claire Cozens