【9月5日 AFP】インドでは過去50年間で200以上の言語が消滅したとの調査結果が今週、発表された。都市部への人口移動と、遊動民族らが持つ母語を話すことに対する恐れが原因とされている。

 インド全土を対象にした4年にわたる大規模な調査の結果、膨大な数の先住民や部族民が住む同国では、急激な近代化が進む中で870の言語が生き残った一方、230の言語が消滅したことが分かった。

 調査を率いたガネシュ・デビー(Ganesh Devy)氏によると、インド国内では現在も480の部族言語が話されているが、人々の流動性と交流の増加を背景にヒンディー語と英語の話者の数が増加している。

 3000人のボランティアからなる調査チームは、インド最奥地の集落の数々を訪ね、今も会話や読み書きに使われている言語の調査と記録にあたった。共同体における母語の民謡・民話や、場所の名前などに使われている言葉から、その言語が現存している証拠を探し、その結果を約1100の言語の存在を示していた1961年の政府の国勢調査結果と比較した。

 デビー氏によると、失われた言語が最も多かったのは、雇用を求めて都市に移住した伝統的漁師たちの住んでいた沿岸部だった。

 また、これまで多くの人から犯罪者の烙印(らくいん)を押され、インドのカースト制度の下層民とされてきた遊動民族の間でも言語が喪失しているという。AFPの取材にデビー氏はその理由を、伝統的な言葉をしゃべらずに出自を隠すことによって「嫌がらせ」を避けようとしているからだと説明した。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA