【7月1日 AFP】第二次アヘン戦争(Second Opium War、アロー戦争)末期、中国・北京(Beijing)市内の清朝時代の離宮、円明園(YuanmingyuanOld Summer Palace)から略奪され、欧州に流出していたネズミとウサギの頭部をかたどったブロンズ像2体が6月28日、中国に返還された。

 天安門広場(Tiananmen Square)に隣接する中国国家博物館(National Museum of China)で行われた記念式典でフランス人富豪のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)氏が中国側に返還した。式典には多数の報道陣が集まり、劉延東(Liu Yandong)国務委員も出席した。

 ピノー氏はブロンズ像の由来について、著名ファッションデザイナーの故イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)氏とパートナー関係にあったピエール・ベルジェ(Pierre Berge)氏から入手したことを明らかにした。ベルジェ氏は2009年に像をオークションに出品し、中国人が1体1400万ユーロ(約18億円 現在の為替レートで円に換算。以下同じ)で落札した。

■2009年のオークションで注目集める

 この中国人が、像は国家遺産の一部であり、違法に海外に持ち出されたと主張して代金の支払いを拒否したことでこれらのブロンズ像に注目が集まった。

 後日、この中国人落札者は古美術収集家で、海外に流出した中国の歴史的遺物を政府に代わって買い戻している民間基金「海外流出文化財救出基金(National Treasures Fund)」の顧問を務める蔡銘超(Cai Mingchao)氏であることが公表された。

 ベルジェ氏は「人権を認める用意が中国にあれば、ブロンズ像をすぐにでも中国に引き渡す」と発言。これに対して中国国営新華社(Xinhua)通信が「人権を盾にとって文化財を誘拐している」と同氏を非難したことから、同氏と中国の対立は政治色を強めた。中国の弁護士らは当時、オークションを開催した競売大手クリスティーズ(Christie's)を相手取って訴訟を起こす可能性を警告していた。

■流出文化財の回収は中国の優先課題

 中国の文化財協会(Cultural Relics Association)によると、1840年から1949年までに海外に流出した文化財は1000万点を超えると推計されており、うち約150万点は円明園のものと見られている。こうした流出文化財は世界各地の博物館に所蔵されており、中でも欧州や米国に集中している。その回収を中国政府は優先課題に位置づけており、潤沢な資金を持つ中国の企業家もオークションでの落札を図っている。

 中国の特別行政区マカオ(Macau)のカジノ経営で知られる実業家スタンレー・ホー(Stanley Ho)氏は、オークションに出品される予定だった馬の頭部のブロンズ像を890万ドル(約8億8000万円)で購入し、その後中国国家博物館に寄贈した。

 今回のネズミとウサギの返還で、円明園から略奪された十二支の頭部像のうち7体が戻ってきたことになると、中国国際放送(China Radio International)は伝えている。(c)AFP