【6月16日 AFP】画期的な航空機搭載レーザー技術を使用した考古学調査によって、1200年前にカンボジアの霧に覆われた山中で栄え、その後失われた中世の都市が発見された。記者とカメラマンが調査への同行を認められた豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)が15日、世界的なスクープとして伝えた。

 同紙によれば、数世紀にわたって密林の中に隠されてきたカンボジア・シエムレアプ(Siem Reap)州にある「マヘンドラパルバタ(Mahendraparvata)」には寺院などもあり、その多くはまだ盗掘・略奪などの被害に遭っていないという。

 今回の調査を率いたロンドン (London) に拠点を置くNPO、Archaeology and Development FoundationADF)のジャンバティスト・シュバンス(Jean-Baptiste Chevance)氏らは、あちこちに地雷が埋められているシエムレアプ州のジャングルで、映画『インディ・ジョーンズ(Indiana Jones)』さながらの調査を実施した。この地域には、世界最大のヒンズー教寺院の遺跡群、アンコール・ワット(Angkor Wat)もある。

■最新技術で上空から情報を収集

 調査隊が使用したのは、「ライダー(Light Detection and RangingLIDAR)」と呼ばれる技術。装置を取り付けたヘリコプターでアンコール・ワットの北にある山の上空を縦横に飛んで7日間にわたってデータを収集し、集めたデータが長年に及ぶ現地調査の結果と合致することを確認した。モーニング・ヘラルド紙の記事は、数十億のレーザーパルスを使って遺跡を覆い尽くすジャングルの木々を事実上、「はぎ取った」ようなものだと指摘している。

 ライダーが収集したデータから得られた衛星ナビゲーションの座標を使った今回の調査で、知られていなかった20以上の寺院を見つけ、古代の運河や排水溝、道路の痕跡を確認し、802年ごろ成立したアンコール帝国(Angkor Empire)の基盤になったとされる都市を発見することができた。考古学者らは今後、長年の困難な現地調査でも実現できなかった完璧な正方形の構造の確認や都市の地図の製作が可能になる。

 シュバンス氏は同紙に対し、古代の聖典から偉大な戦士ジャヤバルマン2世(Jayavarman II、アンコール朝の創建者といわれている)は山の中に首都を持っていたことが知られていたが、「すべての点がどのようにつながり、それらが何を示すのかが分からなかったが、新しいデータでこの都市に道路や運河がつながっていたことが分かった」と語った。

 今回の発見に関する論文は、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載される。(c)AFP