【1月28日 AFP】世界で最大の立体映像(3D)プリンターを使って造る「始点と終点のない家」をオランダの建築家が設計した。

 設計したのはアムステルダム(Amsterdam)にある建築事務所ユニバース・アキテクチャー(Universe Architectur)のヤンヤープ・ライッセンナールス(Janjaap Ruijssenaars)氏。「メビウスの輪」のような形態をしたフロア面積1100平方メートルのビルを巨大3Dプリンター「D-Shape」で造るという。

 イタリアのエンリコ・ディニ(Enrico Dini)氏が設計したこの巨大3Dプリンターは、コンピューターを使って5~10ミリメートル厚の材料の層を重ね、最大6メートル四方の形態を再現できる。

 ライッセンナールス氏はAFPの取材に「この3Dプリンターで芸術作品や堤防用の物体が造られたことはあるが、住宅を造るのは初めてだ」と語った。当初の計画では3Dプリンターを使う予定はなかったが、このハイテク技術が計画に最適だということが分かったという。

■景観と一体となる「メビウスの輪」建築

「始点と終点のない家」というコンセプトは、景観に関する考察から着想したという。「景観そのもののような建物ができるだろうか、と私たちは考えた。そして景観の本質は『始点も終点もない』こと、途切れずに連続していることだと分析した。地球が丸いということだけでなく、水は大地に染みこみ、渓谷は山脈につながるように、常に連続しているのだ」

 ライッセンナールス氏の「メビウスの輪」の形をした設計は、同じオランダの20世紀のデザイナー兼イラストレーター、マウリッツ・コルネリス・エッシャー(M C Escher)のだまし絵とよく似ている。「これを設計する上で、もちろんエッシャーからは着想を得た。平面でのメビウスの輪の王者は彼だ」

 ライッセンナールス氏は、小さな模型であれ建物であれ「メビウスの輪を作るためには細長い平面を作り、それを曲げなければならない」と指摘。「だが3Dプリンターではどこが始点でどこが終点か、見た人が分からないように構造全体を造ることができる」

 オランダの数学者で芸術家のリヌス・ルーロス(Rinus Roelofs)氏と、「D-Shape」を製作したイタリアのディニ氏の協力を得て、設計データをコンピューターに入力していった。約400万ユーロ(約4億9000万円)の建築費が見込まれるこの建物に、ブラジルの国立公園がすでに興味を示している。米国で個人用住宅として建築される可能性もあるという。

 建物ができるまでには1年半かかり、プリンターは約半年間稼働する見込みという。(c)AFP/Charles ONIANS