【1月23日 AFP】米ニューヨーク(New York)の空に君臨してきたエンパイアステートビル(Empire State Building)がその座を脅かされていることに気付いたオーナーのアンソニー・マルキン(Anthony Malkin)氏は、ライバルのビル群を屈服させるために香港から着想を得た──光だ。

 エンパイアステートビルには今、新たに1200個のLED照明が設置され、名高い尖塔を照らしている。アール・デコ様式の同ビルにとって、大恐慌時代の初期に建設されて以来、最も大きな視覚上の変化と言える。

 1933年のモノクロ映画でキングコングも登った尖塔部分は、1956年以降、常に何らかの方法で照明が当てられていた。1976年以降はカラーの照明に変わった。

 夜の習わしとして、ニューヨーカーたちは特別なイベントの際にエンパイアステートビルの尖塔がさまざまな色に変わるのを見てきた。

 米大リーグ(MLB)のニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)がワールドシリーズで勝利したときは青と白でライトアップされ、クリスマスには赤と緑に、セント・パトリック・デー(St.Patrick's Day)には緑色にライトアップされてきた。

 だが、1970年代に設置された、巨大だが効率の悪い照明(電灯1個は小型テーブル大)は、尖塔をぼんやりと輝かせるだけだった。

 現在、マンハッタンでは世界貿易センター(World Trade Center)ビルの再建が進んでいる。昨年には、まだ建設中のこの新しい世界貿易センタービルが、エンパイアステートビルを抜いてニューヨークで最も高いビルになった。

 ペンシルベニア駅(通称ペン駅、Penn Station)そばに新たな高層ビル建設も計画されている。またエンパイアステートビルの近くでは、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)タワーなどミッドタウン地区のビル群がおのおのライトアップを行って、エンパイアステートビルの独壇場に侵入している。

 マルキン氏は、一族の不動産の中核をなす「世界で最も有名なオフィスビル」、エンパイアステートビルが、過去の栄光だけでは生き延びれないことを悟ったという。「香港と上海のビル群を見てからニューヨークに戻ってきて、『時代から遅れている』と感じた。エンパイアステートビルだけでなく、ニューヨークの空の景色全体がね」

 エンパイアステートビルではLED導入後、すでにいくつかのイベントが行われた。1200個のLED照明はコンピューターのマウス操作で1個ずつ制御することが可能だ。

 お披露目イベントではグラミー賞(Grammy award)受賞歌手のアリシア・キーズ(Alicia Keys)のパフォーマンスに合わせ、ビートを刻んで照明が点滅した。また昨年の大統領選挙投票日には、開票速報を青色と赤色の照明で表示した。先週も基本照明に使う7色を決める公開投票が、米SNSフェイスブック(Facebook)で行われた。

 しかしマルキン氏は、香港と同じ道をたどり過ぎることはないと語る。「商業目的にするつもりはない。広告塔ではないんだ」。そして、LED照明という新しい楽しみに浮かれすぎないよう慎重だ。「面白いことに時々、一番美しいショーというのは、簡素なものではないかと思う。私には、ビル全体が青1色が最高だ」(c)AFP/Sebastian Smith