【4月18日 AFP】(写真追加)文化施設への予算削減を続ける政府の方針に反発したイタリアの美術館が、所蔵作品を焼却するという大胆な抗議活動を始めた。

 この美術館はナポリ(Naples)近郊の町カゾーリア(Casoria)にあるカゾーリア現代美術館(Casoria Contemporary Art Museum)。17日に敷地内で、抗議に賛同するフランス人画家セベリーヌ・ブルギニョン(Severine Bourguignon)氏の作品に火が放たれた。ブルギニョン氏はインターネットのテレビ電話サービス、スカイプ(Skype)でこのもようを見届けた。

 同美術館のアントニオ・マンフレーディ(Antonio Manfredi)館長は、「政府の無関心のせいで、当館の1000点に上る所蔵作品はいずれ損なわれてしまう」と語る。「アート戦争」と銘打ったこの抗議活動で、1週間に3作品のペースで焼却していく予定だという。

■マフィアから脅迫も

 同美術館は、ナポリを拠点とするマフィア「カモッラ(Camorra)」に反対する展示を行ったことで有名になり、以前より脅迫を受けていた。

 マフィアからの脅迫や文化遺産保護に無関心な政府に耐えかねたマンフレーディ館長は前年、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相に亡命を求める手紙を送っていた。同氏は亡命が認められれば美術館ごとドイツに行きたいと話していた。

 ドイツ政府からの返答はなかったが、ベルリン(Berlin)の有名な芸術施設「タヘレス(Tacheles)」から、カゾーリア現代美術館に「芸術上の亡命」を受け入れるとの申し出があり、2011年5月に反マフィアをテーマとした所蔵作品の一部がタヘレスで展示された。

 当時、マンフレーディ館長はAFPの取材に対し、「ポンペイ(Pompeii)遺跡が崩壊するにまかせた政府に、私の美術館がどんな期待を持てるというのか」と話していた。西暦79年の噴火によって火山灰に埋もれた古代ローマ都市として有名なポンペイでは、政府の予算削減による遺跡の崩壊が起こっている。

 イタリア文化省は前週、債務の増大を理由としてローマ(Rome)の国立21世紀美術館(MAXXI)を政府の管轄外に置くという非常措置を取ると発表した。MAXXIによれば、2011年の予算は前年比43%減となっていた。(c)AFP

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