【3月13日 AFP】イタリアの美術史家率いる調査チームは12日、フィレンツェ(Florence)にあるベッキオ(Vecchio)宮殿で、レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci、1452~1519)の壁画『アンギアーリの戦い(Battle of Anghiari)』が現存する可能性を示す手がかりが見つかったことを発表した。

 米カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)のマウリツィオ・セラチーニ(Maurizio Seracini)博士らが、ベッキオ宮殿内の豪華に飾られた広間の壁の裏側に内視鏡を入れて調べたところ、採取した破片にダビンチの『モナリザ(Mona Lisa)』にも使われた黒い顔料が含まれていることが分かったという。

 10年にわたって『アンギアーリの戦い』について調査してきたセラチーニ博士はダン・ブラウン(Dan Brown)のベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)』にも実名で登場する人物だ。

 調査では、表面の壁と隠された古い壁の間に3センチほどの空間がある場所が存在することを突き止めた。隠されていた古い壁の表面に赤いラッカーと茶色の顔料があるのも見つかっており、研究者らはフレスコ画が描かれていたことを意味すると話している。

■調査には反対も

 ダビンチは、1440年のミラノ(Milano)とフィレンツェとの戦いを描いた『アンギアーリの戦い』の制作を1505年ごろに始めたが、色が定着しないなどの問題から完成することはなかった。フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)はこの壁画の有名な模写を描いた。

 表の壁には、ダビンチと同時代の画家で、『アンギアーリの戦い』の「優美な美しさ」を賞賛したジョルジョ・バザーリ(Giorgio Vasari)の『マルチアーノの戦い(The Battle of Marciano)』が描かれている。ダビンチの壁画を守るためにバザーリ自身が新しい壁を作ったという説もある。

 セラチーニ博士は、『マルチアーノの戦い』に描かれた1人の兵士が掲げる旗に「Cerca Trova(探せば、見い出される)」という聖書の言葉が書かれていることを指摘し、バサーリが隠されたダビンチ作品の存在を示唆する興味深いヒントを残したという見方を示している。

 フィレンツェのマッテオ・レンツィ(Matteo Renzi)市長はイタリア政府に更なる調査の許可を求めているが、これまでにバサーリの作品に6か所の小さな穴が開けられたこともあり、調査は議論を呼んでいる。前年には国際的な美術史家や保存グループなどが、バサーリの作品が傷つく恐れがあるとして調査に反対する請願書に署名している。(c)AFP/Dario Thuburn