ロンドン(London)のロイヤル・フェスティバル・ホール(Royal Festival Hall)で開催中のイベントで、自身が所有する飛行機の形をした棺を前にポーズをとるマルコム・ブロックルハースト(Malcolm Brocklehurst)さん(2012年1月28日撮影)。(c)AFP/JUSTIN TALLIS
【2月2日 AFP】英国の年金生活者、マルコム・ブロックルハースト(Malcolm Brocklehurst)さん(77)は現役時代に航空技術者として働いていた。今もその仕事と、イングランド・プレミアリーグのブラックプール(Blackpool FC)をこよなく愛するブロックルハーストさんは、死後もそれらを手放すつもりはない。
故に彼の最後の安息地は、飛行機の形をした棺(ひつぎ)だ。オレンジ色に塗られたその棺には、ブラックプールのロゴがくっきりと描き込まれている。「楽しい葬式がいい。みんなが泣いたりするのは嫌だ」とブロックルハーストさんは、AFPの取材に楽しそうに語った。
ブロックルハーストさんの棺は、ロンドン(London)のロイヤル・フェスティバル・ホール(Royal Festival Hall)で開催中のイベント「死:生ける者の祝祭(Death: A Festival for the Living)」で展示されている。
合板の棺に付けられた両翼は、火葬場での取り扱いを考えて取り外し可能にしてある。火葬炉に入るときは、第2次世界大戦当時のパイロットたちの「チョックス・アウェー!(車輪止めをどけろ!)」という掛け声をかけて見送ってほしいという。
■斬新なデザイン
この棺を手がけたのは、ノッティンガム(Nottingham)に本社を置く棺・骨つぼメーカーの子会社「クレイジー・コフィンズ(Crazy Coffins)」。1990年代に奇妙な棺の注文を多く受けるようになった。
クレイジー・コフィンズは英国のテレビ司会者ポーラ・イエーツ(Paula Yates)さんが2000年に死去した際、同社の作った真珠光沢の棺が使われたことで有名になった。これまでにバイキング船や車輪の回るロールスロイス(Rolls Royce)の高級車ファントム(Phantom)、スケートボード、コルク、空に揚げるたこなどの棺・骨つぼを手がけてきた。
これらの棺の一部が今回のイベントで展示されている。その中にバレエシューズの形をした棺がある。元看護師でアマチュアダンサーのパット・コックス(Pat Cox)さん(70)の持ち物だ。
「私の祖父はピアニストで、定期的にパレエ学校で働いていました。幼いころ、ピアノのそばに足を組んで座り、ピンクのパレエシューズをはいた小さな足を眺めていたのを覚えています」とコックスさんは語る。
コックスさんは当初、環境にやさしい葬式を行うためにクレイジー・コフィンズに問い合わせたが、結局、松のフレームに琥珀(こはく)織(タフタ)を使ったパレエシューズ型の棺を作ることになった。「愉快なものを作るのはタブーを破ることになるわ」とコックスさんは言う。
■オープンに死を語りだした英国人
コックスさんの発言は、イベントに参加した葬儀関係者らのコメントとも通じる。控え目で知られる英国人にとって、どのような葬儀で見送って欲しいか家族に話すのは大変なことだという。
同イベントのアートディレクター、ジュード・ケリー(Jude Kelly)さんは、紹介文の中で「いつか死ぬわれわれ普通の人びとにとって(死について)話し合うことはかなりやっかいだ」と述べた。
葬儀ディレクターのアンディー・デリマン(Andy Derriman)氏も「私たちは控え目な国民です。間に合わなくなるまで自分の葬儀について真剣に考えることはない。自分で考える時間を持って欲しい」と語った。
クレイジー・コフィンズのジョン・ジル(John Gill)氏によると顧客の大半はすでに亡くなった人の家族。つまり、急いで棺を作らなければならないことになる。そこで同社では、ウェブサイトでこのような呼び掛けを行っている。――「まず買って、それから死のう」
とはいえ、最近英国では、世界中の葬儀を取り上げた『Making an Exit』などの本が何冊も出版されるなど、死の話題がクローズアップされてきた。死をめぐる沈黙を打破することがイベントの目標だ。
イベントの来場者は棺と一緒に写真に写り、棺の中に横たわって記念撮影する人さえいた。クレイジー・コフィンズのスタッフは、同社の棺が人気になってきたのは、人びとが死についてオープンになってきたことを示していると語った。(c)AFP/Judith Evans









