【8月4日 AFP】ブラジルで3日閉幕した国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産委員会は、2日夜までに新たに21か所を世界遺産(World Heritage)に指定し、登録遺産を過去最高の911か所とすることを決めた。

 今回登録された中で、すでに世界的に観光地などとして著名なのは、フランスの「アルビ(Albi)の司教都市」やアムステルダム(Amsterdam)の「運河網」など少数で、ほかは中国の辺境の山林からイランの複合バザールや、アフリカ・タンザニアの「ンゴロンゴロ(Ngorongoro)保全地域」や、14世紀の韓国の村跡など、後進国にあるこれまで見過ごされてきたユニークな場所が多い。

 冷戦時代に米国が核実験を行ったマーシャル諸島のビキニ環礁(Bikini Atoll)といった意表を突いた選出もあったが、タジキスタン、マーシャル諸島、南太平洋の国キリバスの3か国からは初の世界遺産も生まれた。

 遺産委員会の中には、記録が残る欧州の文化遺産への偏りをなくそうという一致した意識と努力があった。議長を務めたブラジルのジュカ・フェレイラ(Juca Ferreira)文化相は「ある種の不均衡がある。アフリカや南米、アジアといった地域が(欧州の文化遺産ほど)選ばれていない」と述べた。フランチェスコ・バンダリン(Francesco Bandarin)ユネスコ世界遺産センター長によると今回の審議中、「南半球の国々は非常に存在感を増していた」
 
 しかし一方で、後進地域を世界遺産に指定することについて論議も起きている。オーストラリアでは先住民アボリジニの活動家たちが、これ以上「白人のオーストラリア人」の場所を登録すると、自分たちの遺産が消滅してしまうと非難の声を挙げた。

 また国家として独立していないパレスチナ自治区にあるエリコ(Jericho)市街やベツレヘム(Bethlehem)の聖誕教会(Church of the Nativity)といった文化遺産については議論が足踏み状態で、「イスラエル、パレスチナの両者の話し合いを促進しようとしている」(バンダリン氏)と語るにとどまった。(c)AFP/Yana Marull