【7月17日 AFP】ルネサンス期の巨匠画家レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)が「モナリザ(Mona Lisa)」など一連の作品で、繊細なトーンによる写実性を実現した「スフマート」と呼ばれるぼかし技法について、仏ルーブル美術館(Louvre Museum)の研究員らによるチームがX線スキャナーによる研究で、その奥深さに迫った。

 チームは同館が所蔵する500年前のダ・ヴィンチ作品7点を壁から降ろすこともなく、蛍光X線分析装置で、地塗りから顔料層、グレーズ層までの各層を精査した。スフマート技法はこれまでにも詳細に研究されてきたが、フランス国立科学研究センター(CNRS)によると、今回の分析では丹念なこの技法の手順を確認できた点が大きい。

「モナリザ」が肖像画として今日までこれほど評価されているのは、まるで生きている人物であるかのような陰影が、その謎めいた微笑みを浮かべる女性の顔に奥行きと写実性を与えているからだ。そしてその陰影は、透明な絵具の層をグレーズ(塗り重ね)するスフマート技法によって生み出されている。

 グレーズ1回の塗りの厚みは1~2ミクロン単位、非常に微量の絵具を塗るぼかし技法で、ルネサンス期に初めて登場した。この技法を手にしたダ・ヴィンチや同時代の画家たちは、中世までは平板だった絵画に写真のような、画面から今にも飛び出すようなリアリティーをもたらすことができた。(c)AFP