【6月1日 AFP】巨大なクモのオブジェで有名なフランス系米国人芸術家ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)氏が5月31日、米ニューヨーク(New York)市内の病院で死去した。98歳。心臓発作で29日の夜から入院していたという。ルイーズ・ブルジョア・スタジオ(Louise Bourgeois Studio)の関係者が31日、発表した。

 ブルジョワ氏の有名な作品の中には、母親の象徴として作られたクモのオブジェ「ママン(Maman)」がある。カナダ国立美術館(National Gallery of Canada)にあるものは、高さ9メートルにも及ぶ。

 駆け出しの頃、マックス・エルンスト(Max Ernst)やコンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brancusi)にインスピレーションを受けたというブルジョワ氏は、自らを特定のグループに分類することなく、独自のアートを追い求めた。

 最近のオークションで、100万ドル(約9000万円)以上の値を付けた作品もある。

■イタリアでは個展の準備中だった

 ブルジョワ氏死去の報が届いたのは、イタリア・ベネチア(Venice)で同氏の個展の準備が進んでいたときだった。5日に開幕し、9月19日まで開催予定の同展には、ブルジョワ氏のあまり知られていない布作品や2002~08年に描かれたスケッチなどが展示され、主催者の財団によれば、ブルジョワ氏も2日前まで積極的に準備に参加していたという。

■生い立ち

 1911年12月25日にパリ(Paris)に生まれたブルジョワ氏は38年に米国に移住。幼少期や性に対するトラウマを探求した力強い刺激的な作品を数多く手がけた。

 両親はタペストリーを修復する工房を構えていた。ブルジョワ氏は父親との関係がうまくいかず、父の母に対する不貞を決して許さなかった。74年の作品「The Destruction of the Father」は、そんな父親とのトラウマ的な関係を表現している。

 パリで芸術を学び、38年に米国人の芸術史家ロバート・ゴールドウォーター(Robert Goldwater)氏と結婚してニューヨークに移住した。3人の子どもが生まれ、51年に米市民権を取得し、73年に夫と死別している。(c)AFP

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