【3月27日 AFP】大ヒット映画の『アバター(Avatar)』から『ロード・オブ・ザ・リング(ord of the Rings)』まで、植物が映画で重要な役割を演じることは珍しいことではないが、さすがに植物が観るための映画というのは無かった――これまでは。

 ニューヨーク(New York)の画廊では、7つの鉢植えが、史上初の植物用の旅行ドキュメンタリー映画『Strange Skies(ストレンジスカイズ)』を過去7週間にわたって鑑賞していたという。

 この映画は、コンセプチュアルアーティストのジョナソン・キーツ(Jonathon Keats)さんによるもので、イタリアの1日の空模様が約6分間に圧縮されている。キースさんは、この作品のため、約2か月間イタリアの空を撮影した。

 鉢植えの植物たちは、まるで映画館の座席のようにていねいに並べられて、スクリーンを通じてイタリアの陽光を浴びた。

 過去に、ハチが受粉する映像を使った「植物用ポルノ」を制作したこともあるというキーツさんは、『アバター』のジェームズ・キャメロン(James Cameron)監督のような相手と競争することは困難だと述べる。

「しかし、(キャメロン監督よりも)もっと多くの観客たちに対するサービスがないことに気づいた。人間よりも植物の方が多いんだ。ディズニー(Disney)やMGMといった会社が人間に提供しているものと同じものを植物に提供したい、というのがわたしの基本的な考えだ」(ジョナソン・キーツさん)

 ゆらゆらとした白い布のスクリーンに投影された映像は、夜明けの晴れ渡った空に巻雲が現れ、ときおり飛行機雲も出現し、鳥が一瞬のゲスト出演を果たし、そして夕暮れ時となる。夜には、ロマンチックな月の光が、観客の植物たちを照らす。

 映画は無音で、もちろん植物たちは拍手をしない。少し不安になるほどイチジクの葉が落ちる以外には、まったく反応がない。

 しかし、この展示を開催したスティーブン・スクイブ(Stephen Squibb)氏は、観客の植物たちはいつになくくぎ付けだという。

 スクイブ氏は、植物は光合成でエネルギーを得ていると指摘し、「これが彼らの食事なのさ」と述べ、ニューヨーク在住の植物たちがイタリアの光を浴びていることについて「(植物たちは)まさに食生活を変えているんだ」と語った。

■展示観覧者の反応

 あるアーティストは「残虐さが無く、生物を尊重して作品に含めているところが良い」と評価した。

 別の写真家は、「ぼくたちは死んだらそれっきりだけど、植物たちは毎年春になると戻ってくる」と述べ、植物への敬意を表明した。しかし数分間じっくり映像を眺めた後には、「意味がわからない。ただの木と光だ。ハッパを吸う人には、何か訴えかけるものがあるのかもね」と評した。

■次の顧客はバクテリア

 キーツさんは現在、ニューヨークのYaddoアートコミュニティーに滞在して作品制作をしている。カリフォルニア(California)州の美術館で「植物のためのレストラン」を開催する予定だという。

 しかし、その前に、キーツさんはさらに新たな顧客の開拓に乗り出したようだ。バクテリアである。

 キーツさんによると、バクテリアに一般相対性理論と量子力学を教えるための教材を、アミノ酸とブドウ糖を材料に開発することが目標だという。「この教科書は、微生物と人類の両方にとって有益なものとなるだろう。バクテリアに質の高い教育を提供し、生活環境の向上を図ることによって、バクテリアに病原体にならないよう働きかけることができるようになると考えている」のだそうだ。(c)AFP/Sebastian Smith