【12月12日 AFP】競売大手サザビーズ(Sotheby's)主催のアンティークオークションが10日、ニューヨーク(New York)開かれ、フランスの作家エミール・ゾラ(Emile Zola)が所有していたこともある古代ローマのサルコファガス(大理石の石棺)のレリーフが予想価格を大幅に上回る150万ドル(約1億3000万円)で落札された。

 3世紀に作られた大理石のレリーフはギリシャ神話に登場する豊穣とブドウ酒の神ディオニュソス(Dionysiac)をモチーフにしたもので、落札価格は15万~25万ドル(約1300万~2200万円)と予想されていた。

 サザビーズの副社長でアンティークを専門にするフローレント・ハインツ(Florent Heintz)氏によると、この種のレリーフは世界でも4~5点しか存在しないという。6人が入札に参加し、電話で参加した匿名の人物が落札した。

■過去500年の所有者たち

 ゾラがこのレリーフを所有していたことが分かったのはつい最近のこと。ハインツ氏がルーブル美術館(Louvre Museum)のデータベースを調べ、ゾラが死去した翌年の1903年の書類で、ゾラの所有が確認されたという。

 所有者が確認されている過去500年では、イタリアの名門貴族ボルゲーゼ(Borghese)家が300年近くローマ(Rome)で所有した後、フランスの女優セシル・ソレル(Cecile Sorel)の手に渡り、パリ(Paris)にある自宅のバスタブの装飾に用いられた。その後、フランスのポール・レノー(Paul Reynaud)元首相がレリーフを手にする。

 ゾラは1898年、フランス陸軍参謀本部勤務の大尉だったユダヤ人のアルフレッド・ドレフュス(Alfred Dreyfus)に対するえん罪事件、いわゆる「ドレフュス事件」をめぐり、フランス政府を批判する公開書簡『我弾劾す(J'accuse)』を新聞に寄稿した。

 今回のオークションには53万500ドル(約4700万円)で落札されたギリシャ神話の女神アフロディテ(Aphrodite)をかたどったローマ時代のブロンズ像なども出品され、合計で580万ドル(約5億2000万円)を売り上げたが、サザビーズによるとゾラが所有していたレリーフが「ハイライトだった」という。(c)AFP