【10月30日 AFP】米ワシントンD.C.(Washington D.C.)のスミソニアン博物館(Smithsonian Institution)で、16世紀のペルシャやトルコのシャーやスルタン、一般のイスラム教徒らの手による貴重な書籍の展示会「Falnama: The Book of Omens」が開催されている。

 同博物館でアジア美術を展示しているアーサー・M・サックラー・ギャラリー (Arthur M. Sackler Gallery)の主任キュレーター兼イスラム美術キュレーターのマスーメ・ファルハド(Massumeh Farhad)さんはAFPに対し、「今回の展示は、2度と実現できない1回きりのものだ」と語った。
 
 会場では、さまざまな写本や旧約聖書(Old Testament)やコーラン(Koran)、星座に登場する人物を描いた占星術書など65冊が展示されている

 東洋地域では珍しく大きなサイズの写本類は、1550年以降にペルシャやオスマントルコで作製された、有名な4冊の占星術書のうちの3冊からのもの。シャー・タフマースプ(Shah Tahmasb、在位:1524~1576)の王宮が発行した占星術書も含まれている。

 展示物は、トルコのトプカプ宮殿(Topkapi Palace)やパリ(Paris)のルーブル(Louvre)美術館、ベルリン(Berlin)のイスラム博物館、ジュネーブ(Geneva)の歴史博物館、アイルランド・ダブリン(Dublin)のチェスタービーティー図書館(Chester Beatty Library)などから貸与されたものだ。

 ファルハドさんは、「これらの写本類を対象にした初めての研究だといえる。目録も世界初のものとなる」と語った。また、イスラムでは人物の挿絵などは宗教的な理由から使われないのに対し、展示されている占星術書などが「個人的な非宗教的な文脈」で使われていたという事実は、イスラム教に対するこれまでとは異なる見方を示してくれるものだと語った。

 イスラム教徒たちは、宗教儀式や礼拝を行う前、占星術書を無作為に開き、そのページにある図や言葉を見て今後の指針にしたり、悩みの解決に役立てたりしていたという。ファルハドさんは、「占星術書は、旅行の出発日や戦争開始の時期、結婚から馬の売却までなど人々が何かを決める際の指針を提供していた。占星術や天文学はこの地域において非常に重要な役割を果たしていた。(イスラム社会の)豊かな伝統の1つだ」と説明した。

 写本には、イスラム教の預言者からアダム(Adam)とイブ(Eve)や聖母マリア(Virgin Mary)など聖書(Bible)の登場人物までさまざまな人物が描かれているほか、星座や天体を象徴するシンボルなども含まれている。

 ファルハドさんは、「この地域の文化の異なる一面、そして『これから起こることを知りたい』という普遍的なメッセージを示している。こうした悩みは今も昔も変わらないことだ」と語った。

 展示会は来年1月24日まで開催される。(c)AFP/Virginie Montet