【10月11日 AFP】オランダ生まれの巨匠画家ビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Van Gogh)は文学的才能にも恵まれていた――オランダの研究チームがゴッホの残した膨大な書簡を分析した結果、こうした事実が明らかになった。その研究結果が6巻の書籍にまとめられこのほど出版されたのを記念し、オランダ・アムステルダム(Amsterdam)のゴッホ美術館(Van Gogh Museum)では、展覧会「ゴッホの手紙:巨匠画家は語る(Van Gogh's letters: The artist speaks)」が9日から開催されている。

 展覧会では、1872~1890年にゴッホが書いた893通および受け取った83通の手紙が展示されている。破損しやすい手紙類が展覧会で展示されるのはまれなことだ。そのほか、手紙の中でゴッホ自身が言及している、「沈む太陽と種まく人(Sower with Setting Sun)」などの有名な絵画作品も展示されている。展覧会の会期は2010年1月3日まで。

 ゴッホの手紙を分析した研究チームは、「彼はすばらしい作家だ。どのように言葉を使うべきかを知っている。(手紙は)読み出したら止まらないほどだ」とゴッホの文学的才能を高く評価。ゴッホ美術館ディレクターのアクセル・ルガー(Axel Ruger)氏も「近代美術界の巨匠であるゴッホは、文学的にも大きな功績を残している」と話している。

■「貧乏で狂った天才」のイメージ、真実と違う?

 オランダの研究チームは15年の年月をかけて、計902通の手紙を丹念に分析した。

 ゴッホは「苦悩する芸術家」の典型とされているが、分析の結果、それ以上の味わい深い側面を持つゴッホの姿を浮かび上がらせることができたと、研究チームの1人、Hans Luijten氏は指摘している。「ゴッホの神話を打ち砕くようで申し訳ないが、彼は貧困にあえいでいたわけでも、不当な評価されていたわけでもなかった。狂った天才でもなかった」
 
 オランダ語やフランス語で書かれた手紙の大半は、弟テオ(Theo van Gogh)にあてたものだ。それ以外の手紙は、友人、そしてポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)、エミール・ベルナール(Emile Bernard)など19世紀後期印象派画家の仲間たちにあてて書かれている。

 分析の結果、手紙の主な内容は美術や文学に関するものだった。研究チームは、すでに確認されている約2000点にのぼる美術作品や書籍などの資料とともに分析を行った。ゴッホは手紙の中で、自分の芸術についての見方や、さまざまな考え方、夢、アイディアなどについて語っていた。また文学や美術、歴史についても言及していたという。

 また、これまでゴッホは生前に正当な評価を受けていなかったと考えられてきたが、手紙によると仲間から尊敬されていたことも明らかになった。さらに、自殺する前の6年間はテオから毎月200フランの仕送りを受け取っていたことも分かっている。当時、妻と5人の子どもがいる郵便配達員の月収はわずか135フランだった。

 研究チームによると、ゴッホが深く物事を考え、精力的で、強い意志を持ち、極めて注意深い人物であることも、手紙から判明したという。(c)AFP/Martine Pauwels