【6月24日 AFP】(一部更新)スペイン北部のアタプエルカ(Atapuerca)遺跡で発掘された「最初のヨーロッパ人」の遺骨から、この先史人類たちが人肉を食べており、しかも、とりわけ子どもの肉を好んでいたことが明らかになった。

 アタプエルカ・プロジェクトの共同ディレクター、Jose Maria Bermudez de Castro氏は、「彼らが習慣的に食人を行っていたことがわかった」と語った。

 遺骨などの分析によると、食人は、儀式としてではなく食用で行われていたという。敵対する相手を殺したあとで、主に子どもや若者が食べられていたとみられる。

 同氏は、「人類史において、食人がはっきりと証明された初の事例だ」と語った。遺跡の洞窟から発見された遺骨は「散らばり、砕かれ、バラバラにされ、狩猟で得たウマやシカ、サイなどの動物と混ざっており」、人間によって食べられていたという。こうしたことから、同氏は、「食人が、儀式ではなく、食文化として存在していた様子をうかがわせる」と指摘した。

 当時、食料や水は豊富にあり、イノシシやウマ、シカの狩猟も可能だった。「これは、食料不足で食人が行われたのではないことを示している。敵対する相手を殺し、その肉を食べたのだ」

「また、2つの層で、食人された遺骨が発見された。これは、食人が一度きりの行動ではなく、継続的に行われていたことを示している」

「もう1つの興味深い側面は、われわれが「犠牲者」と特定した11人のうち、大半が子どもか若者だったことだ。また、女性を含む若い年代の成人の遺骨も2人分あったとみている。これらの点は、彼らが人口ピラミッドの基底部から殺害していたことを示唆している」

 アタプエルカ遺跡はユーラシア大陸の西端に位置しており、先史人類が孤立した特徴のある発展を遂げたとみられる。初期の人類から現生人類にいたるまでの幅広い特徴が発見されており、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産にも登録されている。

  アタプエルカ遺跡は19世紀末に、鉄道のトンネル施設工事で山を爆破した際に発見された。しかし、共同ディレクターのEudald Carbonell氏によると、当時のスペインには、発掘調査を開始するための科学知識が十分になかったという。結局、最初の発掘作業は、1978年まで開始されなかった。その後、1984年の発掘で150体の人骨を発見。1992年には完全な状態の人骨が発見され、その2年後には80万年以上前の人骨が発見された。

 これらの遺骨は、欧州に到達した最初の人類、ホモ・アンテセソール(Homo antecessor)のものとみられる。ホモ・アンテセソールは、ラテン語で開拓者や探検者を意味し、ネアンデルタール人(Neanderthal)や現生人類のホモ・サピエンス(Homo sapiens)以前に存在していた。アフリカから中東やイタリア、フランスなどを経由した長い移住の末に、アタプエルカの洞窟に着いたとみられる。

 アタプエルカは2本の川の合流点で、気候は快適、動植物が豊かであり、定住に非常に適しているのだという。(c)AFP/Virginie Grognou