【5月14日 AFP】(一部更新)身長はたったの6センチだが、胸の大きさは米女優ドリー・パートン(Dolly Parton)顔負け――そんな「彼女」の「推定年齢」は少なくとも3万5000歳で、世界最古の造形美術品である可能性が高い。

 ドイツ南西部シェルクリンゲン(Schelklingen)にあるホーレ・フェルス(Hohle Fels)洞窟の遺跡から、約3万5000年前の後期旧石器時代の人類がマンモスの牙で作った「世界最古のビーナス像」を発掘したと、独テュービンゲン大(University of Tuebingen)のニコラス・コナード(Nicholas Conard)教授が14日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 洞窟の名前をとって「ホーレ・フェルスのビーナス」と名付けられたこの像は、放射性炭素年代測定では約3万2000年前との結果が出た。しかしコナード教授は、この測定法では3万年以上前の遺物が実際よりもあとの年代と判定される傾向があるため、ビーナス像は3万5000年以上前のものと考えるのが妥当と指摘。世界最古の造形美術品だとの考えを示した。

 絵画については、南部アフリカで約7万5000年前のものとされる壁画が発見されているが、これまでに発見された最古の彫像は、3万から3万5000年前のものだった。

 ビーナス像は前年9月、洞窟内の地中3メートルほどの場所で見つかった。粘土質シルトの影響で長い年月の間に赤茶色に変色しており、発掘されたときには6つに分解していたが、元の形に復元された。いかり肩で、おなかは平坦。胸と陰部が大きく臀部(でんぶ)が強調されていることから、多産の象徴として使用されていた可能性がある。

 頭部はなく、代わりにひもを通す輪が付いている。左の腕と肩は見つかっていないが、コナード教授は「今後の発掘で発見されるのでは」と期待を寄せる。教授はまた、今回の発見は、石器時代の美術の発達に関するこれまでの概念を突き崩すものだと強調。ドナウ(Danube)川上流域は革新的な美術のゆりかごとして位置づけられるとも指摘した。(c)AFP