【4月20日 AFP】スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督が映画化した『太陽の帝国(Empire of the Sun)』などで知られる英国の作家、ジェームズ・グラハム・バラード(James Graham Ballard)氏が19日、78歳で死去した。同氏の代理人が明らかにした。バラード氏はここ数年、がんを患っていた。

 SF作家と呼ばれることが多かったバラード氏だが、自作については生前、「未来の心理を描写したものだ」と語っていた。

 正統的なSF短編小説で作家としてのキャリアをスタートしたバラード氏は、しだいに社会的な題材を扱った冒険的な「ニューウェーブ」スタイルの小説を書くようになった。
 
 1930年代、両親とともに上海(Shanghai)の外国人居留地で暮らしていたバラード氏は、1941年に太平洋戦争が勃発すると旧日本軍の捕虜収容所に終了された。1984年に発表した『太陽の帝国』は、この時の体験をもとにした半自伝的小説で、大きな成功を収めた。この作品は1987年にスピルバーグ監督が映画化した。

 このほか、自動車の衝突による衝撃がもたらす屈折したエロチシズムを描いた『クラッシュ(Crash)』(1973年)も、カナダ出身の鬼才、デービッド・クローネンバーグ(David Cronenberg)監督により、1996年に映画化されている。

 バラード氏の作品は、人間の欲望や性癖が一線を越えた時、何が起きるかを問い続けてきた。同氏がこのテーマに回帰した『コカイン・ナイト(Cocaine Nights)』(1996年)や『スーパー・カンヌ(Super-Cannes)』(2001年)では、ごく平凡な人間の人生が、暴力によって解放される様が描かれている。

 バラード氏は、1946年に中国から英国に帰国した後は、終生をロンドン南部サリー(Surrey)州シェパートン(Shepperton)の自宅で過ごした。(c)AFP