【7月30日 AFP】世界で最も権威ある文学賞のひとつ「ブッカー賞(Man Booker Prize)」の2008年度の候補13作品が29日、発表された。先日、『真夜中の子供たち(Midnight's Children)』が同賞創設40周年記念の「ベスト・オブ・ブッカー(Best of Booker)賞」に選出されたサルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)氏(61)の新作『The Enchantress of Florence』も選ばれている。

 ブッカー賞は毎年、英連邦及びアイルランド国籍の作家によって書かれた最も優れた小説に贈られる。審査が実施される前年に出版され英語で書かれたものが対象となる。1969年に創設されたが1974年と1992年は各2冊が受賞したため、これまでの受賞作は41冊。

 ブックメーカーは、『The Enchantress of Florence』とJoseph O'Neill氏の『Netherland』が候補に入ると予想していた。ブックメーカー「ラドブロークス(Ladbrokes)」の広報担当は、「ラシュディ氏は有力候補で、彼に賭ける人は多いと予測している」と語った。しかし、別のブックメーカー「ウィリアム・ヒル(William Hill)」の担当者は、「ラシュディ氏はベスト・オブ・ブッカー賞の受賞者だが、過去の受賞作は20年以上も前のもので、ラシュディ氏の最近の作品は文学賞からは遠ざかっている」と反論。O'Neill氏の『Netherland』が注目株だという。

 審査委員長のマイケル・ポーティロ(Michael Portillo)元英国防相によると、今年の特徴は、長編小説で、ユーモアが目立つ点だ。「5人の審査員がほぼ同意して、13作品を選んだ。パキスタン、インド、オーストラリア、アイルランド、英国の作品が選ばれ、地理的にもバランスが取れている。5人のデビュー作品に過去の受賞者2人の作品など、おもしろい選出となっていることを喜ばしく思っている。多種多様な作品が並んだ」とポーティロ審査委員長は語っている。

 13人中6人は英国人。過去の受賞者2人とは、ラシュディ氏と、『From A to X』でノミネートされたジョン・バージャー(John Berger)氏。81歳のバージャー氏は13人中最高齢で、36年前に『G』で同賞を受賞している。

 デビュー作で候補に選ばれた5作は、英国人作家トム・ロブ・スミス(Tom Rob Smith)氏の『Child 44』、インド人作家Aravind Adiga氏の『The White Tiger』、オーストラリア人作家スティーブ・トルツ(Steve Toltz)氏の『A Fraction of the Whole』、パキスタン出身Mohammed Hanif氏の『A Case of Exploding Mangoes』、英国人作家Gaynor Arnold氏の『Girl in a Blue Dress』。スミス氏は29歳で、候補者の中では最年少になる。

 最終候補作は9月9日に発表され、受賞作品は10月14日にロンドン(London)で行われる授賞式で明らかになる。

 以下は、29日に発表された候補13作品。

-Aravind Adiga:『The White Tiger』
-Gaynor Arnold:『Girl in a Blue Dress』
-Sebastian Barry:『The Secret Scripture
-ジョン・バージャー:『From A to X』
-Michelle de Kretser:『The Lost Dog
-アミタヴ・ゴーシュ(Amitav Ghosh):『Sea of Poppies
-リンダ・グラント(Linda Grant):『The Clothes on Their Backs
-Mohammed Hanif:『A Case of Exploding Mangoes』
-フィリップ・ヘンシャー(Philip Hensher):『The Northern Clemency
-Joseph O'Neill:『Netherland』
-サルマン・ラシュディ:『The Enchantress of Florence』
-トム・ロブ・スミス:『Child 44』
-スティーブ・トルツ:『A Fraction of the Whole』

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