【6月10日 AFP】音楽と詩の卓越した才能で長年高い評価を得てきた米ミュージシャン、ボブ・ディラン(Bob Dylan、67)の絵画展が14日、ロンドン(London)のハルシオン・ギャラリー(Halcyon Gallery)でオープンを迎える。

「The Drawn Blank Series」と題されたこの展覧会には、ヌード画、肖像画、風景画など約300点が展示されている。これらはディランが1989年から1992年までツアーの間に描きためた絵画やスケッチに手を加えたもの。

 印象派やビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)など後期印象派のようなスタイルで描かれているが、ディランはタイムズ(Times)紙のインタビューに答え、意識して描いたわけではないと語る。「ドガ(Edgar Degas)やゴッホのスタイルで描いたり、ダビンチ(Leonardo da Vinci)の絵をまねる方法を学校で習ったことはない。複製する設備も持っていない。そうした画家の作品をまねる能力があれば影響をうけた可能性があるけど、私にそんな力はない。似たところがあれば、それは単なる偶然か本能的なものだ」

 展覧会はすでに、ドイツ東部ケムニッツ(Chemnitz)で開かれている。展覧会が行われた美術館の館長が、1994年のディランの画集を見て、それに色を付けて手を加え展示してはどうかとディランを説得したのがきっかけだった。だが主要美術館での展覧会としては、ロンドンが初となる。

 ディランは、「時代は変る(The Times They Are A-Changin)」や「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」のような時代を代表する楽曲で知られる。まだ若いフォークシンガーだった1960年代に、ニューヨーク(New York)のメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)で初めてアートに触れた瞬間のことを次のように語った。「展示されている莫大な量の作品に圧倒された。初めて見たのはゴーギャン(Eugene Henri Paul Gauguin)の展覧会だった。まるで映画を見ているかのように、どれだけでもその絵の前に立っていられた。足が疲れることもなかった。時間の感覚がなくなってしまったんだ」

 批評家や一般の来場者の感想については、ディランは達観している。「見る人が楽しんでくれれば、私にとってそれ以上のことはない。好きな絵ではないと思われるかもしれないが、私はどちらでも構わない」

 全作品に署名が入っている。署名の書き方について練習したのかと尋ねられると、ディランは「それらしく書くのが難しかったから練習したよ。やっと書けるようになって、今では小切手にサインするような感覚だ」と答えた。(c)AFP


展覧会「The Drawn Blank Series」の公式ウェブサイト(英語)