【5月29日 AFP】「007」シリーズ最新作『Devil May Care』が、原作者イアン・フレミング(Ian Fleming)の生誕100周年の28日、刊行された。

■記念初版本購入のため、ファンは徹夜で行列

 ロンドン(London)市内の書店ウォーターストーン(Waterstone)は同日から、著者セバスチャン・フォークス(Sebastian Faulks)氏のサインと通し番号が入った1冊100ポンド(約2万円)のデラックス版200冊を限定販売。熱心なファンはこの本を購入しようと徹夜で行列を作った。

 行列の先頭に立っていたのはロンドン東部在住のスティーブ・ノリス(Steve Norris)さん(39)。27日の午後4時から並び初めたという。「物心ついたときから」ボンドのファンだそうだ。

 書店は並んで待ちわびるファンのため早めに開店。映画版「007」のテーマソングが流れる店内で、ノリスさんが通し番号7番(007)の同著を手にすると、後ろに並ぶ人々から拍手が沸き起こった。

 新作の発売を楽しみにしていたというウォーターストーンのジョー・ジェームス(Jo James)さんは、「早くからファンが並ぶだろうとは思っていたが、徹夜で並ぶとは予想していなかった」と話した。

 インターネット通販大手のアマゾン(Amazon)によれば、同著は既に英国の売れ筋ランキング1位を獲得しており、小説としては年間最大の予約数を記録したという。

 27日に行われた出版記念イベントでは、英海軍による厳重な警備の中、表紙のモデルとなったTuuli Shipsterさんが印刷工場から初版本数冊を受け取りボートで出発。テムズ(Thames)川を下り、英軍艦エクセター(HMS Exeter)で待機していたフォークス氏とフレミングの遺族に手渡した。フォークス氏らはベントレー(Bentley)に乗り込み、受け取った本をウォーターストーンまで届けた。


■フレミングのスタイルを忠実に再現した最新作

 フォークス氏は『よみがえる鳥の歌(Birdsong)』、『The Girl at the Lion D'Or』、『シャーロット・グレイ(Charlotte Gray)』の三部作で知られる有名な文芸作家。『Devil May Care』は「007」シリーズ15作目になる。

 フォークス氏は28日に行われた出版発表記者会見で、出版されるまで極秘とされていたストーリーについて語った。これによると、舞台は冷戦時代の1967年で、初めてイランを訪れたボンドが、大規模なヘロイン生産を開始する医薬業界の大物Julius Gorner医師と対決するという。手袋をはめた左手にサルの手を隠しているGornerは、ボンドにとって最大の敵になる可能性があると、パブリシティ用資料に書かれている。

 新作を執筆する際、「フレミングの明瞭簡潔なジャーナリスト的スタイルをまねて書いた」と語るフォークス氏は、スタイルをまねても、パロディにはしたくなかったと言う。「これは、イアン・フレミングのスタイルで書いたセバスチャン・フォークスの作品。ボンドの描写は、愛情を持って描いたキャラクターへのオマージュだ」

 なお、新作のボンドは小道具にばかり頼ってはいないので、映画版よりも危険にさらされるそうだ。(c)AFP