2008年2月3日、インド・ニューデリー(New Delhi)で開催されたワールド・ブック・フェアで、展示された本を眺める男性。(c)AFP/Manpreet ROMANA
【2月7日 AFP】「より多くの読者を獲得しようと母語を捨て、英語で書くインドの作家たちが増え、インドの豊かな多言語文化が失われつつある」-専門家らがこう警鐘を鳴らしている。
インドの作家、特に新進作家たちが、自分たちの言語で書き続けようと思えるためには唯一、作品が英語などの主要言語に翻訳される機会が増えるしかないと専門家は言う。
「作家は、地域語で書くと読まれないと思うからこそ、英語で書く。作品が英語に翻訳される機会に恵まれないと、地域語の文学はいずれ絶滅する」と同国北東部にあるミゾラム大学(Mizoram University)のCherrie Channgte講師(文学)は語る。
インドの有名作家で、前週末にジャイプール(Jaipur)で1週間の文学フェスティバルを主催したナミータ・ゴーカレー(Namita Gokhale)氏は、「文学の保存」のためにも地域語で書かれた作品の翻訳は必要だと語る。
■英語で書いてこそ世界に注目される?
ゴーカレー氏は、同フェスティバルで「インドには豊かな文学の歴史があるが、(翻訳なしでは)保存されずに失われてしまう」と痛切に訴えた。
インド文学は、経済の急成長とともに世界の注目を集めるようになった。英語で書く作家には世界中の出版社からオファーが舞い込み、「スター」のような存在だ。
その一方で、インドの地域語で書かれた本は無視されることが多くなる。
ヒンズー語で書くニータ・グプタ(Neeta Gupta)氏は、「世界中が、インド文学は英語だと思い込んでいる。地域文学は膨大な数にのぼるが、(英語で書かれたものと)同程度の注目を集めるとは言い難い」と嘆いた。
■人口11億人のインド、公用語は22、地域語は100以上
インドの英語使用人口は、経済の世界進出に伴い伸び続けてはいるが、全人口11億人のうち約3億5000万人にすぎない。しかも英語は22の公用語には含まれておらず、政府や法廷で使用される「準公用語」の扱いだ。
公用語に含まれているのは母語として4億2200万人の使用者がいるヒンズー語のほか、マラーティ語、ベンガル語、グジャラート語、マラヤーラム語、マニプリ語、テルグ語、ウルドゥー語などがある。そのほかに、それぞれ1万人前後が使用する「母語」が各地に100以上あり、方言はさらに数万にも上るとされている。
「地域語の文学はすでに廃れつつある」とミゾラム大のChanngte氏は言う。同氏自身、母語はミゾ語だが、英語も同じように流ちょうに操る。「ミゾ語の文学はいつか消えてしまうだろう」
■多様性の鍵を握るのは翻訳、問題は質
一方で、インド国内の文化、言語、宗教の多様性の海における交流と理解を促進するために、さまざまなインド文学を各地域語に翻訳していく必要もあると専門家は口をそろえる。
詩人のTemsula Ao氏いわく「翻訳は、文化同士を対話させるもの」だ。
同氏も北東部メガラヤ(Meghalaya)州の州都シロン(Shillong)にあるノースイースタンヒル大学(Northeastern Hill University)で英文学教授を務める。
だが、地域語で書く作家の国内外、双方での知名度を上げることができるかどうかの大きな難関は、質の良い翻訳者が必要なことだ。
さらに、地域語から別の地域語、あるいはフランス語など英語以外の主要語へ訳す場合には、英語に翻訳されたものが原本になるため「オリジナルの風味の多くが損なわれる(仏出版社Buchet-Chastelのある編集者)」ことになりかねない。(c)AFP





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