【1月31日 AFP】英国スコットランド(Scotland)北方のシェトランド諸島(Shetland Islands)最大の町ラーウィック(Lerwick)で29日、バイキング時代の遺産を記念する火の祭典、ウップヘリーアー(Up-Helly-Aa)が開催された。

■バイキング当時の時代絵巻

 夜通し行われる祭りには、島民たちが鉄かぶとに鎖かたびら、手斧といった完璧な「ノースマン(バイキング)」のいでたちで参加した。

 祭りのクライマックスは夜に始まった「たいまつ行列」。激しく燃えるたいまつを手に「Guizer」と呼ばれる住民900人が町を練り歩き、ラーウィックの空は炎と煙に覆われた。

 行列の中心には、祭りのために特注された「ロングシップ(バイキングが使った帆船)」のレプリカが据えられた。帆船の周囲にはぐるりと薪の山が築かれ、行進が終わってGuizer全員がたいまつを投げ込むと、船は巨大な炎に包まれた。

 その後、Guizerをはじめとする約1000人がいくつかの会場に分かれ、バイキングの歌や寸劇を上演した。

■共同体意識の象徴

 夜空に赤々と燃え上がる忘れがたい情景を見物客の目に焼き付けるウップヘリーアー。資金の大半を地元がまかなうこの祭典は、シェトランド諸島特有の強く揺るぎない共同体意識を際だたせる行事でもある。

 地元選出の自由民主党(Liberal Democrats)下院議員、アリステア・カーマイケル(Alistair Carmichael)氏はこの祭典について、「強く団結した共同体」であるシェトランドの「極めて重要かつ非常にシェトランド的」な特徴を示すものだと語る。

「共同体のメンバーが共同体のために力を合わせる。ウップヘリーアーはその象徴だ」(カーマイケル氏)

■準備も出費も誇りのため

 シェトランドの共同体意識は、祭りの長「Guizer Jarl」を中心にたいまつ行列を率いるバイキング姿の男たちの集団「Jarl Squad」に表れている。

 Jarl Squadのメンバーは数年かけて祭りに備える。細部まで完璧にこだわった手作りの豪華な衣装など、祭りにかける費用は1人当たりの平均で2000ポンド(約42万円)にもなるという。

 メンバーの1人、ライアン・ライト(Ryan Wright)さん(27)は、Jarl Squadに参加することは「特権」であり「誇り」だと話す。ライトさんは普段は料理人兼トラック運転手をしている。

「1回の休暇のために1600ポンド(約34万円)も使いたくないが、5、6回着るだけで屋根裏にしまい込む祭りの衣装には喜んで使いたくなる。ぼくはウップヘリーアーとともに育った。ほとんどの住民は自分たちをシェトランド人というよりスカンディナビア人だと思ってるよ」(ライトさん)

■団結と包容力のシェトランド

 シェトランド諸島は8世紀から9世紀にかけて当初は侵略者だったバイキングを受け入れたが、21世紀の現在も島外からやってくる移住者を迎え入れ続けている。カーマイケル議員は、移住者に対して非常に神経質な英国のほかの地域と対比させながら、シェトランドの包容力について誇り高く語った。

 カーマイケル議員は、英国の最北端というシェトランド諸島の地理的条件が共同体意識を強めたと話す。

 シェトランド諸島はグレートブリテン島スコットランド地方の北東約200キロの海に浮かぶ島々で、全長は約160キロ、大小100以上の島々から成る。(c)AFP/Katherine Haddon