【1月15日 AFP】バチカンの日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ(L'Osservatore Romano)」が14日、世界的ベストセラー「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズが「善か悪か」をめぐる賛否両論を紹介する記事を掲載した。

■子どもたちの「霊的成長を阻害」?

 記事のタイトルは「The Double Face of Harry Potter(ハリー・ポッターの二面性)」。この中で英文学者のEdoardo Rialti氏は「ヨゼフ・ラッツィンガー(Joseph Ratzinger)氏(現ローマ法王の本名)の懸念は当然」との主張を展開した。

 現ローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)は枢機卿時代の2003年、「善悪の境界をあいまいにし、子どもたちの霊的成長を阻む恐れがある」とした上で、同シリーズの「巧妙な誘惑」に対する懸念を示している。

 法王は2003年、ドイツのカトリック教徒で「Harry Potter - Good or Evil(ハリー・ポッターは善か悪か)」を著した社会学者のGabriele Kuby氏に、この懸念を示した書簡を送っている。

 Kuby氏は2005年7月、法王の書簡を公開。この中で法王は「あなたがハリー・ポッターの問題に光を当て、知らせてくれたことを感謝する。あまり知られていないが、(同シリーズには)巧妙な誘惑が含まれている。子どもたちが大きく影響され、キリスト教信仰の魂が適切に成長し熟す前に崩壊する恐れもある」との懸念を表明。

 同時に「若い魂が優れた善悪の判断力を失い、悪の誘惑に耐えるために必要な強さも知恵も持たなくなってしまう」との考えも述べている。

■擁護派は「善行推奨」と反論

 これに対し、カトリック教徒のエッセイストで作家のPaolo Gulisano氏は「登場人物の素晴らしい冒険を通じて、著者の人類学的な洞察力が示されている」とシリーズを擁護。個人主義的な「ポスト・モダン」の世界を描く著者のローリング氏は、同シリーズを通じて「善行が最善」との考え方を子どもたちに訴えていると主張している。(c)AFP