【1月9日 AFP】ナイジェリア南部のアロク(Alok)村には、男根の形をした火山岩が円形に並ぶナイジェリア版「ストーンヘンジ」がある。この「イコムの石柱(Ikom Monolith)」は今も昔も村人たちの崇拝の対象だが、数年前に新聞で紹介されて以来、国内外で熱狂的な関心を集めている。

 イコムの石柱は、高さ1メートルから2メートル弱の火山岩の環状列石で、30個の円を形作っている。地元の人々から「知恵」と尊称されるこの石柱は、何世紀もの間ひっそりとたたずんできたが、複数の新聞が数年前に「古代エジプトや旧約聖書の時代に栄えた文明の名残り」と報じて以来、一躍脚光を浴びるようになった。

 ある新聞は、「エデンの園が現在のナイジェリアの場所にあったことの証拠だ」とも書きたて、地元ブロガーの間でも「サハラ砂漠にはかつて高度な文明があった」「その文明は大洪水や古代の神々の戦争により滅んだ」など議論が沸騰した。 

 イコムの石柱は近年、「世界記念物基金(World Monuments FundWMF)」の危機遺産リストに登録され、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産暫定リストにも掲載された。世界遺産に登録されれば、スクル( Sukhur )の文化的景観、オスン-オソボ聖林(Sacred Forest of Osun)に続きナイジェリアとしては3番目となる。

 イコムから南に車で数時間のところにあるカラバル(Calabar)の博物館には、2007年に本物のイコムの石柱の20倍から30倍の大きさの巨大な石が建設された。そのため、アロクの郊外で「あの『巨大な』石柱はどこですか」と住民に聞いても、きょとんとされるはめになる。
 
■共同体の守り神、悪人がさわると恐ろしいたたりが

 AFP記者は、地元の首長、Sylvanusさんにイコムの石柱を案内してもらった。石柱は塀で囲まれ、敷地にはオレンジの木、ポインセチア、ヤシの木が植えられている。

 Sylvanusさんは、石の表面の模様がそれぞれリーダーシップ、多産、戦争、平和などを表していると説明してくれた。 

 WMFは、この石が作られた年代を「紀元前2000年」としているが、Sylvanusさんによると、最新の放射性炭素年代測定では4500年前という結果が出たという。ピラミッドが作られた頃とほぼ同じということになる。だがSylvanusさんはその10分後、石柱を訪れた人々に対し「45万年前のものです」と説明していた。

 この石柱は崇拝の対象とされているが、いけにえを捧げることは禁止されている。ヤムイモの収穫祭の前日にあたる毎年9月14日には、平和を表す白、肥沃を表す青、勇気を表す赤の3色の粉が、思春期前の子どもと閉経後の女性により、石柱に振りかけられる。

「悪者はここには敢えて来ようとしない。泥棒がこの石をいじろうものなら、石は割れて共同体に不幸が降りかかる。泥棒の方も、目が見えなくなるか、両足が切断されると言われています」とSylvanusさんは語った。(c)AFP/Helen Vesperini