【12月10日 AFP】2007年のノーベル賞授賞式を10日に控え、本年のノーベル文学賞を受賞した英国人作家ドリス・レッシング(Doris Lessing)氏(88)の講演文の代読が、7日にストックホルム(Stockholm)で行われた。

 レッシング氏は健康上の理由で10日の授賞式を欠席する。そのため、通常であれば本人が行う授賞式前に行われる講演も、今回はレッシング氏の講演文を英国人編集者のNicholas Pearson氏が代読する形で行われた。

『On not winning the Nobel Prize』と題された講演では、まず本の重要性が述べられた。「わたしたちには文学という宝物の家がある。そこには豊かな文学のすべてがあり、訪れた人は誰でも何度でも手にすることができる。文学がない世界では、わたしたちはどれほど貧しく空虚な人間になることだろう」

 また、「すべての世代をむなしさへ導くインターネットによって、わたしたちの精神はどう変わっていくのだろう」として、豊かな国の若者がテレビやインターネットに夢中になり、本に対する興味を無くしている現状について警鐘を鳴らした。

 さらに、文学に対する強い興味があるアフリカなどの途上国の人々には、文学触れる十分な機会がないことについて危惧の念を示した。特に、レッシング氏自身が育ったジンバブエで学校の教師らが本の寄付を要求している現状を訴えた。

 講演文は最後に、次のような楽観的な見方を述べて締めくくられた。「すべての人の心の奥深くに『物語を語る人』がいる。善のものであれ悪のものであれ、わたしたちを形作り、保ち、創造するのは、わたしたちの想像力だ」(c)AFP