【11月21日 AFP】約20年前に米国テキサス(Texas)州の倉庫から盗まれ、近年になってニューヨーク(New York)の街頭のごみの山から発見されたメキシコ人画家ルフィーノ・タマヨ(Rufino Tamayo)の絵画が20日、競売大手サザビーズ(Sotheby's)のオークションで、104万9000ドル(約1億1400万円)の値で落札された。

『トレス・ペルソナヘス(Tres personajes、3人の人物)』と題された同作品は、メキシコ画家として最も著名な一人、タマヨの1970年の作品。電話による入札で北米のバイヤーが落札した。

 赤、紫、黄で大胆に描かれたこの絵画は1977年、テキサス州のある男性が妻の誕生日プレゼントとして5万5000ドル(約600万円)で購入した。夫妻はこの絵を倉庫に保管したが、1987年に引っ越しのため荷物をまとめたときに、絵がなくなっていることに気付いたという。

 それから16年が経過した2003年のある朝、ニューヨークの通りでゴミの中にある絵を見つけて拾ったのが、住民のエリザベス・ギブソン(Elizabeth Gibson)さん。98×130センチの絵は無傷だったという。

 ギブソンさんは発見当時について「土曜日の朝だった。コーヒーショップへ行こうと7時に家を出て、道ばたに黒色のゴミ袋と一緒にこの絵があったのを見つけた。いったんは通り過ぎてコーヒーを飲んでいると、頭の中で絵を取りに戻れ、という声が繰り返し聞こえてきた。額縁は壊れていたけれど、絵の状態は完全だった」と語った。

 ギブソンさんは数か月間、同作品を自宅の壁に掛けておいたが、「貴重な絵画かもしれない」という友人の言葉に触発されて、調べ始めた。すると、同作品がテレビ番組『アンティーク・ロードショー(The Antiques Roadshow)』で、盗品絵画として取り上げられたことがあるのをインターネットで見つけたという。ギブソンさんはサザビーズに協力を求め、本来の所有者を見つけ出し、絵画を返却した。

 行方不明だった16年間については依然まったく謎で、米連邦捜査局(FBI)は現在もこの盗難事件の捜査を続けている。

 オークションでの同作品の予想落札額は75万ドル(約8170万円)だったが、これを上回る落札額となった。サザビーズのMarysol Nieves氏は、同絵画はタマヨ作品の重要な要素すべてを凝縮した典型的な作品だと語った。

 ギブソンさんにはすでに所有者から、拾得と返却の礼金として1万5000ドル(約160万円)が渡されており、落札額からも一部が譲渡される予定だ。(c)AFP